JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[U-12] 地球惑星科学の進むべき道10ビッグデータとオープンサイエンス

2020年7月15日(水) 14:15 〜 15:45 Ch.1

コンビーナ:藤井 良一(情報•システム研究機構)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、木村 学(東京海洋大学・海洋資源環境学部)、座長:木村 学(東京海洋大学・海洋資源環境学部)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

14:20 〜 14:45

[U12-01] 提⾔「⽇本におけるオープンサイエンスの深化と推進」に向けて

★招待講演

*喜連川 優1 (1.国立情報学研究所/東京大学)

法制度でしかないという課題もある。公正取引委員会では、デジタル社会における競争政策を検討している。旧来のビジネスと異なり市場支配力が極めて強い事業者が相対的に出現しやすく、不当なデータ収集、不当なデータの囲い込みは独占禁止法上問題となりうることを指摘している。加え2012年は米国がビッグデータイニシアティブを発表、深層学習画像認識で従来手法に対し圧倒的な性能向上を達成した年でもあった。この時点からAIへの燃料としてのデータがクローズアップされ、AIとビッグデータが並走する時代が始まり、データの重要性が認識され今日に至っている。我が国はSociety5.0を提案、データを幅広く収集し、公開から限定的な共有、あるいは非公開まで、協調と競争のバランスが取れた共有が極めて重要な時代となったことを示した。日本学術会議課題別委員会では、以上の背景の中で、データ科学を駆動し、科学の作法をも変えうるオープンサイエンスを、データを中心とした総合的な視点でとらえ、研究データ共有の促進と共有の為のプラットフォームの重要性を明らかにすることを目的として検討を進めて来た。

研究データの重要性が著しく高まる中で、データ利用の法制度も十分に整っているとは言えない。データには著作権法による直接的保護はない。データベースの権利は規定されているものの実施例は少ない。この状況に鑑み、我が国は、2019年不正競争防止法に限定提供データという枠を導入、データの他者と共有とともに、データの権利を保護する画期的な法制度を設けた。しかしながら現時点では、我が国限定のて、データに個人情報が含まれる場合には、個人情報保護法が適用される。EUは我が国より厳しい制度を有している。2020年、米国はカルフォルニア州で同様の法制度が導入されつつある。

現状は研究者に、関係する種々のルールに配慮しなければならないという負担を強いる。或いは、データ利用への不安から研究活動を萎縮させかねない。これらを踏まえてAIに関するデータのバイアス検証の必要性、データ利用の透明性に関して多くの研究が開始されている。

委員会ではデータに対する現状の認識を多様な学術の専門家から聴取し整理することを試みた.結分野による温度差が大きいことが明らかとなった。データ科学を牽引し、科学を変容するデータ共有の精神が進展すべく、日本学術会議は丁寧な議論を今後も重ねてゆくことが必須と言える。議論の結果、今後について提言としてまとめる準備を進めている。

提言としては、1)ルール作りの必要性、2)プラットフォーム構築の必要性、3)研究試料保存の必要性としてまとめる方向で議論を進めている。