JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[U-12] 地球惑星科学の進むべき道10ビッグデータとオープンサイエンス

2020年7月15日(水) 14:15 〜 15:45 Ch.1

コンビーナ:藤井 良一(情報•システム研究機構)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、木村 学(東京海洋大学・海洋資源環境学部)、座長:木村 学(東京海洋大学・海洋資源環境学部)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

15:30 〜 15:45

[U12-05] 海洋科学分野におけるビッグデータマネジメント

★招待講演

*神田 穣太1 (1.東京海洋大学学術研究院海洋環境科学部門)

キーワード:海洋、データ公開、ビッグデータ

海洋科学分野においては、早くから観測データの共有・公開のための国際的枠組みが整備されてきた。1960年にユネスコに設置された政府間海洋学委員会(IOC)は、海洋科学分野の国際協力を主目的に設置されたが、研究推進の一環として、加盟国が観測データを交換する仕組みを設けている。具体的には加盟各国に国ごとの海洋データセンターを設け、各国内の海洋データを収集・管理・公開する仕組みを設けた上で、各国のセンターを介した情報交換により国際的なデータ公開システムを構築するものである。我が国では、海上保安庁海洋情報部が日本海洋データセンター(JODC)を運用している。またIOCには国際海洋データ・情報交換システム(IODE)が設けられ、データ交換や公開の技術的検討や将来の方向性などを議論しつつ活動している。このように、海洋観測データに関しては貴重なデータを国際的に共有しようとする動きがかなり早くからあったと言え、経験を積み重ねる中でシステムが構築されてきた。

この間に、海洋科学も海洋観測技術も長足の進歩を遂げ、IOCなどの活動範囲も多様化している。海洋データの公開・交換についても新しい側面が顕著になってきた。旧来の船舶による観測に加え、人工衛星やフロートによる広域・連続的な観測データが得られるようになってきた。データ量が膨大なものとなる一方で、データ処理能力の向上を背景にリアルタイムで観測データを処理しつつ、モデル計算へのデータ同化により、時々刻々変化する海洋の状況を高精度に予測することが可能になってきている。巨大化とリアルタイム化への対応が大きな方向性として挙げられるだろう。

例えばアルゴ計画は、世界気象機関(WMO)、IOC等の国際機関と各国の研究・行政機関が協力し、自動的に昇降して観測を行うアルゴフロートを全球展開し、全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視・把握するシステムを構築する国際的な科学プロジェクトである。各国の多数のフロートから得られる膨大なデータは全て無償で公開され、リアルタイムでの公開とクオリティチェックを経たアーカイブ化が並行して行われる。

さらに、個々の研究者・研究グループや行政機関がそれぞれの目的で行った観測の結果を受動的に収集・公開する段階から進んで、気候変動と海洋の関連が注目されるなかで大型の国際共同プロジェクトが次々に実施される状況も踏まえ、多様な海洋データへのニーズを意識ながら、観測リソースの合理的な投入や観測デザインの検討を行い、海洋観測全体をコーディネートする全球海洋観測システム(GOOS)などの枠組も設けられている。

日本海洋学会の複数の会員の協力をいただき、このような海洋分野の様々なデータマネジメントの現状と課題、今後の方向性について、現在行われている様々な取り組みを紹介しつつ議論する。