JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-24] 新型コロナウィルス感染症と地球の環境・災害

2020年7月13日(月) 14:15 〜 15:45 Ch.1

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、山中 大学(総合地球環境学研究所/神戸大学名誉教授)、座長:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)

14:30 〜 14:42

[U24-02] COVID-19 流行とモビリティ:健康な空間に向けて

★招待講演

*中谷 友樹1 (1.東北大学)

キーワード:人のモビリティ、接触、健康格差、移動体ビッグデータ、地理学

我々の日常生活を基礎づけている人のモビリティ(移動性)と健康の関連は、健康地理学における主要な研究トピックの1つである。本報告では、人のモビリティに着目して、COVID-19流行の影響を考えてみたい。第1に、どのような人の空間的移動が、COVID-19の流行を基礎付けたのだろうか、また、それは制御可能なのだろうか。各種の移動制限(入国制限、移動自粛要請、ロックダウンなど)が流行の抑制手段として実施された。健康の維持を目的としたモビリティの抑制である。スマートフォンの普及に伴う大規模な位置情報が利用可能となって初のパンデミックとなったこともあり、人のモビリティと人同士の接触、COVID-19流行推移の関係把握は世界各地でこれまでにない規模と形式で議論されるようになった。日本での人の移動の抑制がどのような規模であったのかを、位置情報のビッグデータに基づいて報告する。第2に、COVID-19流行は人のモビリティの削減と生活様式の変革を通して、人の健康にどのような影響を及ぼしたのだろうか。報告者が共同研究者と実施した社会調査からは、個人の経済的な状況が悪化するほど外出行動が減り、運動の減少・座位時間の増加・精神的健康度の悪化など健康への負の影響が懸念され、そこには職業上の階層間格差が認められた。第3に、これらを受けて流行後の日常の生活空間にどのような影響が及ぶのだろうか。あるいは、どのように変えられるべきなのだろうか。公的な空間への外出を制限し、人との接触を避ける新しい生活様式は、公共交通機関への依存度が高く、高密度で接触機会の多い大都市に多くの課題をつきつけている。その一方で、人のモビリティと関連する都市空間の健康研究(ウォーカビリティ研究など)は、人の居住密度を高め、公共交通機関を含めた生活基盤を維持することが、環境への負荷の低減とともに、公衆衛生上の価値を持つことを示してきた。社会関係の構築や創造性において、face-to-faceの接触にはテレコミュニケーションによる代替が効かない機能もある。監視・モビリティ支援の両面に寄与する位置情報サービスの発展の中、必要な人の移動と社会的な接触の範囲、ひいては健康を支える(健康の格差を抑える)空間のデザインを改めて問い直す、これまでにない機会が到来している。