JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[U-24] 新型コロナウィルス感染症と地球の環境・災害

コンビーナ:松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、和田 章(東京工業大学)、山中 大学(総合地球環境学研究所/神戸大学名誉教授)

[U24-P04] 新型コロナウイルス感染症下での“災害時避難”に関する都道府県および自治体別のWeb情報発信状況調査(速報)

*佐野 浩彬1千葉 洋平1三浦 伸也1臼田 裕一郎1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:避難行動、避難所、Web情報、新型コロナウィルス感染症、自然災害

近年、日本では平成28年熊本地震や北海道胆振東部地震といった地震災害、平成30年7月豪雨や令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風といった風水害など、甚大な被害をもたらす自然災害が頻発している。こうした自然災害から身を守るためには、そのリスクを適切に回避することが求められる。特に、これから迫りくる出水期(梅雨期・台風期)には、風水害の被害に見舞われないようにするため、適切に「難を避ける(避難)」ことが重要である。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)下では密閉空間・密集場所・密接場面の3つの密を避けることが推奨され、これらを避けることにより感染症の拡大要因となるクラスター発生のリスクを回避できるとされた。ただし、多くの人々が想像する避難では、COVID-19下で避けるべきとされる3密の環境を回避することが難しい。

そこで、日本の内閣府防災・消防庁・厚生労働省ではこうした迫りくる自然災害に備えることを目的として、都道府県や保健所設置市・特別区等に対して「避難所における新型コロナウィルス感染症への対応について」(2020年4月1日および4月7日)の通達を出している。この通達では、「災害が発生し避難所を開設する場合には、COVID-19の状況を踏まえ、感染症対策に万全を期することが重要」(4月1日通達より)であるとされており、「平時の事前準備及び災害時の対応の参考」として9項目の留意事項を提示している(4月7日通達より)。

以上を踏まえて、発表者らは特に今後の出水期や風水害等に向けて、都道府県や市区町村といった自治体がCOVID-19下において、内閣府防災等が提示した通達をどのように活かし、自然災害への備えを行っているかを網羅的かつ俯瞰的に把握するため、日本全国の都道府県および自治体のWebサイトを検索し、COVID-19下における「避難」もしくは「避難所」等に関する情報(以下、COVID-19×災害時避難に関する情報)の発信を行っている事例を網羅的に収集した。その結果、都道府県では37道府県(感染症等に関する関連情報の発信を含む場合は41道府県)での情報発信を確認できた。また、市区町村では1,741自治体のうち、666自治体(感染症等に関する関連情報の発信を含む場合は736自治体)で「COVID-19×災害時避難に関する情報」発信を確認できた(2020年6月12日現在)。これは日本の市区町村全体の約38%に該当する。

また、収集した情報を基づいて、都道府県や自治体での情報発信状況を俯瞰的に整理して把握できるよう、地図で可視化したアプリケーションの構築を試み、試験的に公開した(https://dil.bosai.go.jp/disaster/covid19/index.html)。このアプリケーションでは、国・都道府県・自治体が相互にCOVID19×災害時避難に関する取り組みを参照し、それぞれで必要かつ有益な情報を入手して活用できることを目指した。そこでは、内閣府防災等の通達で示された「平時の事前準備及び災害時の対応」の9項目の留意事項をもとに、各自治体等で行われている取り組みをサマリーレポートとしてまとめたものを公開した。本アプリケーションは2020年5月25日に公開したが、6月12日現在、5,056ビューの閲覧が記録されている。

本アプリケーションの構築を含めた取り組みはまだ途中段階にあり、こうした取り組みの事例の収集・蓄積を通じて、他の地域で活用できる事例やエッセンスを抽出し、日本全体でCOVID-19下における災害時避難のあり方や対策の実践につながる情報提供を実現することが望まれる。