日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS03] 大規模な水蒸気場と組織化した雲システム

2022年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横井 覚(海洋研究開発機構)、コンビーナ:三浦 裕亮(国立大学法人 東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、濱田 篤(富山大学)、コンビーナ:高須賀 大輔(海洋研究開発機構)、座長:高須賀 大輔(海洋研究開発機構)、濱田 篤(富山大学)

11:45 〜 12:00

[AAS03-10] 気候モデルにおけるダブルITCZ問題はどうしたら緩和できるか?

*川合 秀明1神代 剛1、行本 誠史1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:熱帯収束帯、気候モデル、雲

ダブルITCZ問題は、気候モデルにとって共通する長年の問題であり、その原因について長い間議論がなされてきている。気候モデルにおけるダブルITCZ問題はどうしたら緩和できるだろうか?

 CMIP5で使用されていた気候モデルMRI-CGCM3では、放射バイアスは非常に深刻で、特に南大洋ではそのバイアスが大きかった。しかし、CMIP6の参加モデルであるMRI-ESM2(Yukimoto et al. 2019)は、雲に関する様々な改良などにより(Kawai et al. 2019)、こうした放射バイアスはかなり小さくなっている。一方、MRI-ESM2では、ダブルITCZも、CMIP5で使用されていたMRI-CGCM3に比べて改善している。この放射バイアスの減少は、ダブルITCZ問題の緩和の原因なのだろうか?

 MRI-ESM2の放射バイアスの軽減に寄与したそれぞれのスキームの変更がダブルITCZ問題にどう影響したかを調査するため、それぞれの変更を一つずつ旧モデルの扱いに戻していく実験を行った。実験の結果、南大洋の短波放射入射バイアスが増加していくにつれ、南半球熱帯の降水が増加していき、ダブルITCZ問題が悪化していくことが示された(Kawai et al. 2021)。この結果は、気候モデルのダブルITCZ問題は、南大洋などの放射バイアスを減少させることで、少なくともある程度は緩和されることを示唆している。