12:00 〜 12:15
[AAS03-11] 広帯域放射伝達モデル"MstrnX"の更新
キーワード:放射伝達モデル、気体吸収過程
気象・気候モデルに必須の物理過程として、放射伝達過程が挙げられる。放射伝達過程は、力学過程で計算された大気場に対して放射エネルギーの伝達を計算し、各層の大気の加熱率を出力する。放射伝達モデルはこの過程をモデル化したものであり、計算コストの都合上、多くの仮定やパラメタリゼーションが用いられている。時間・空間スケールの高解像度化が進んだ近年では、詳細な表現が可能になったことにより、モデル変数の誤差も改善したと言える。筆者は高解像度気候計算時代に即した放射伝達モデルの発展について検討を行っている。本研究では、気体吸収過程の太陽放射領域についての更新を示す。
本研究では、広帯域放射伝達モデルMstrnX (Sekiguchi and Nakajima, 2008)を使用した。MstrnXは旧CCSR(現東大AORI)で開発された放射伝達モデルであり、MIROC (Tatebe et al., 2019)、NICAM (Satoh et al., 2008)などに導入されている。高速化のため、吸収過程と散乱過程はあらかじめテーブル化されている。気体吸収テーブルは29バンド111チャンネル版(以下、温暖化対応版)がCMIP6向けに採用されている。この気体吸収テーブルは二酸化炭素倍増状態やメタン、一酸化二窒素が増加した状態を再現するように最適化されており、二酸化炭素4倍増のケースで放射強制力の精度が不十分であることが指摘されている (Pincus et al., 2015)。また、太陽放射領域での吸収が少ないことも示されている(Smith et al., 2020) 。これは、使用している吸収線データベースがHITRAN2004(Rothman et al., 2005)であり、近年のデータベースの更新により水蒸気の吸収線が大幅に増加したためと考えられる。更に、従来4 mmで太陽放射領域と地球放射領域を分離していたが、範囲外の寄与を考慮するため、太陽放射と地球放射を分離して計算するように更新する。バンド内の積分点数、積分点、重みに関しては、従来通り最適化手法を用いて決定する。目的関数はLBLモデルを真値としたTOA, 地表面、対流圏界面の放射フラックスと加熱率の二乗平均誤差を用いる。初期値を数通りに設定し、閾値以下の誤差の積分点数を採用する。
本研究によって更新されたモデルは相関k-分布モデル比較プロジェクト(CKDMIP; the Correlated K-Distribution Model Intercomparison Project)に参加する(Hogan and Matricardi, 2020)。CKDMIPは同じ吸収線データベースを用いて広帯域モデルを作成し、設定された34シナリオ、50地点の大気について放射伝達計算を行い、LBLモデルに対して評価、比較を行う。太陽放射領域について、波数250 – 50000 cm-1のそれぞれの気体の光学的厚さが提供されており、これを用いて吸収テーブルを作成した。吸収気体は、H2O, CO2, O3, N2O, CH4, O2, N2, CFC-11(等価吸収強度), CFC-12が提供されているが、CFC-11,12に関してはこの領域では扱わない。
CKDMIPではバンド数に対する精度を確認するため、複数のバンド数のモデル結果を提供することが推奨されている。本研究では、太陽放射領域について6, 14, 22, 30バンドの吸収テーブルを作成した。大会では、CKDMIP大気に対するそれぞれの評価と参加する他のモデルとの比較を示す予定である。
本研究では、広帯域放射伝達モデルMstrnX (Sekiguchi and Nakajima, 2008)を使用した。MstrnXは旧CCSR(現東大AORI)で開発された放射伝達モデルであり、MIROC (Tatebe et al., 2019)、NICAM (Satoh et al., 2008)などに導入されている。高速化のため、吸収過程と散乱過程はあらかじめテーブル化されている。気体吸収テーブルは29バンド111チャンネル版(以下、温暖化対応版)がCMIP6向けに採用されている。この気体吸収テーブルは二酸化炭素倍増状態やメタン、一酸化二窒素が増加した状態を再現するように最適化されており、二酸化炭素4倍増のケースで放射強制力の精度が不十分であることが指摘されている (Pincus et al., 2015)。また、太陽放射領域での吸収が少ないことも示されている(Smith et al., 2020) 。これは、使用している吸収線データベースがHITRAN2004(Rothman et al., 2005)であり、近年のデータベースの更新により水蒸気の吸収線が大幅に増加したためと考えられる。更に、従来4 mmで太陽放射領域と地球放射領域を分離していたが、範囲外の寄与を考慮するため、太陽放射と地球放射を分離して計算するように更新する。バンド内の積分点数、積分点、重みに関しては、従来通り最適化手法を用いて決定する。目的関数はLBLモデルを真値としたTOA, 地表面、対流圏界面の放射フラックスと加熱率の二乗平均誤差を用いる。初期値を数通りに設定し、閾値以下の誤差の積分点数を採用する。
本研究によって更新されたモデルは相関k-分布モデル比較プロジェクト(CKDMIP; the Correlated K-Distribution Model Intercomparison Project)に参加する(Hogan and Matricardi, 2020)。CKDMIPは同じ吸収線データベースを用いて広帯域モデルを作成し、設定された34シナリオ、50地点の大気について放射伝達計算を行い、LBLモデルに対して評価、比較を行う。太陽放射領域について、波数250 – 50000 cm-1のそれぞれの気体の光学的厚さが提供されており、これを用いて吸収テーブルを作成した。吸収気体は、H2O, CO2, O3, N2O, CH4, O2, N2, CFC-11(等価吸収強度), CFC-12が提供されているが、CFC-11,12に関してはこの領域では扱わない。
CKDMIPではバンド数に対する精度を確認するため、複数のバンド数のモデル結果を提供することが推奨されている。本研究では、太陽放射領域について6, 14, 22, 30バンドの吸収テーブルを作成した。大会では、CKDMIP大気に対するそれぞれの評価と参加する他のモデルとの比較を示す予定である。