日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS04] Extreme Events: Observations and Modeling

2022年5月27日(金) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Nayak Sridhara(Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)、コンビーナ:竹見 哲也(京都大学防災研究所)、Iizuka Satoshi(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)、座長:竹見 哲也(京都大学防災研究所)、Satoshi Iizuka(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

09:30 〜 09:45

[AAS04-03] のかつて無い2021年夏の北日本熱波とその全球的なリンケージ

★招待講演

*見延 庄士郎1、小川 史明1榎本 剛2美山 透3中野 満寿男4関澤 偲温5 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.京都大学防災研究所、3.海洋研究開発機構・アプリケーションラボ、4.海洋研究開発機構・地球環境部門、5.東京大学先端科学技術研究センター)

キーワード:熱波、ブロッキング、ジェット気流

2021年7月中旬から8月上旬にかけて北日本を中心に発生した未曾有の熱波について、局地的特徴、地域的な大気循環偏差、グローバルなテレコネクションについて調査した。この熱波は、札幌で記録破りの連日の真夏日(日最高気温が30℃以上)をもたらし、この熱波期間中の平均気温と日照時間は北海道の多くの地点で記録的な高さとなった。北海道熱波は、日本の北に位置するロシアのサハリン島を中心とした対流圏全体の高温偏差の一部であり、上空の高気圧性循環と関連している。この高気圧性循環異常とそれに伴う南の弱い低気圧性循環は、対流圏上層にダイポールタイプのブロッキングを形成した。このブロッキングはロスビー波の砕波によって始まり、3週間ほど継続した。ジェット気流の本流はブロッキングの北側を流れ、日本を北に迂回した。このジェット気流の変化により、暖かい熱帯の空気が日本上空に流れ込み、これが熱波の主な原因であろう。また、ジェット気流は通常ユーラシア大陸の湿った空気を日本に移流するにもかかわず、2021年には日本よりも北にシフトしたことにより、日本への湿った空気の流入が減少して、日照時間が例年より長くなったと考えている。テレコネクションについて、フィリピン北東部の対流活発化に伴い、太平洋日本(PJ)パターンが1958年以降で3番目に高く,中緯度の異常な大気循環の形成に重要な役割を果たした。また、2021年熱波にはFukutomi et al. (2012)が見出したユーラシア大陸を横断する2週間程度の周期性の伝搬信号が重要である可能性がある。この伝搬シグナルをより活発に研究されている熱帯の二週間程度の変動と区別するために,本研究では Northern Eurasia quasi-BiWeekly Oscillation (NE-BWO)と呼ぶ.ユーラシア大陸を横断したNE-BWOが東アジアに伝播したタイミングと,上述のブロッキングの発生がほぼ一致するため,NE-BWOが北日本付近の異常な大気循環と熱波を引き起こした可能性がある。地球温暖化のもとでの地域的な変化と将来の熱波との関係について考察した。