日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] Multiple scale structure and their interactions in Asian monsoon system

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:徹 寺尾(香川大学教育学部)、コンビーナ:鼎 信次郎(東京工業大学 環境・社会理工学院)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境学域)、Chairperson:Petrus J van Oevelen(George Mason University)、鼎 信次郎(東京工業大学 環境・社会理工学院)

14:45 〜 15:00

[AAS08-05] モンスーンアジアにおける雨量と人口の分布の多重スケール構造

*山中 大学1 (1.総合地球環境学研究所/神戸大学名誉教授)

キーワード:モンスーンアジア、雨量分布、人口密度

山中他(JpGU-AGU2020 U24-01)は日本47都道府県およびインドネシア34州の大部分(北海道やインドネシア外島などでは下位行政区画)のCOVID-19総感染者数が一義的には人口密度に比例し,自然災害の被害者数においても同様になることを指摘した.今回は,このような人口分布の偏在,より正確に言えば行政区画の人口密度の格差に普遍的法則性が見られることを示し,それが河川流域の降水量(で決まる米生産量)のような気候学的要因によることを主張する.

日イ両国の行政区画には, 人口∝人口密度1/2 (図)および(人口密度=人口/面積なので当然であるが) 面積∝ 人口密度-1/2 という傾向が存在する.すなわち近似的に人口×面積[km2] ≒一定(≒1011)であり,狭いほど人口が多い.両国の行政区域は千年以上前(日本では701年の律令国より前の古代豪族国,インドネシアでも同じ頃の各民族王国)に大島嶼内の河川流域(流域を囲む稜線または河川自体で境される)を基本に成立し,次第に各区域に跨り最終的には全土(日本では江戸幕府,インドネシアではバタビア(ジャカルタ)蘭植民地政府)に及ぶ専制・中央集権下(完全な一極集中は日本では明治維新後,インドネシアは独立後)の集中居住(城下町,藩王都)とその人口を養う周辺の広い農業(米作)地域を形成してきた結果である.

米作地域では人口∝水田面積∝地域内河川の流域降水量(体積)あるいは人口密度∝年降水量[mm]で,年降水量の海岸集中(Ogino et al., 2016, 2017)からも確認できる.従って各行政区域の人口∝年降水量×面積,また年降水量∝1/面積2 のような傾向をもつ.少雨地域ほど行政区域の面積は広い(雨量1/4なら面積2倍).一方,ある期間の降水量の極値∝期間1/2(Jennings, 1950; 吉野, 1960; 二宮・榊原, 1979; Matsumoto, 1993; 木口・沖, 2010など)つまりある期間内の降水強度=降水量/期間の極値∝期間-1/2が知られている.気象現象の空間スケール∝時間スケールから降水強度極値2×面積≒一定,また年降水量∝降水強度極値4 となる.年降水量2倍なら降水強度極値は21/4≒1.2つまり2割増す.

感染症では感染率∝平均対人距離-1∝人口密度1/2から総感染者数=人口×感染率∝人口密度∝人口2,他の人口密度依存の災害でも同様に総被害者数∝人口2となるので,規模が大きくなると人口に比例した医療・防災体制では対応できない.古代米作本位・専制制に由来する中央集権的一極集中(都市)は,人口比例(住民平等)な民主制には適合していないことが示唆される.