日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 成層圏・対流圏過程とその気候への影響

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (7) (Ch.07)

コンビーナ:高麗 正史(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻大気海洋科学講座)、コンビーナ:田口 正和(愛知教育大学)、木下 武也(海洋研究開発機構)、コンビーナ:江口 菜穂(Kyushu University)、座長:高麗 正史(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻大気海洋科学講座)

11:00 〜 13:00

[AAS10-P01] 南半球における成層圏突然昇温の季節性

*岩尾 航希1渡辺 真吾2廣岡 俊彦3 (1.熊本高等専門学校、2.海洋研究開発機構、3.九州大学大学院理学研究院)

キーワード:成層圏突然昇温、プラネタリー波、オゾン加熱

北半球では,成層圏突然昇温(SSW)は主に冬季(12月~2月)に観測されており,多くの研究者により広く調べられている。一方,南半球におけるSSWはほとんど例がなく,これまで2002年と2019年の春先9月に2度だけ観測されている。この季節的な違いに関しては,南半球冬季成層圏では西風が非常に強いためプラネタリー波が成層圏に伝播できないことが,要因として考えられている。しかし,SSWは南半球でほとんど観測されず研究も進んでいないため,成層圏での波活動度の変化に関連したSSWの季節性のメカニズムは未だ分かっていない。本研究では,ERA5やMERRA-2の再解析データを用いて,南半球でSSWを生じる春先の波動のメカニズムについて詳細に調べた。
その結果,南半球で9月に成層圏突然昇温が生じたときには,下部成層圏で定常的なプラネタリー波(STPW)のE-P fluxが発散しており,上部成層圏で収束していることが分かった。つまり,下部成層圏でSTPWが生成され,それが上部成層圏に伝播して散逸したことを示唆している。春先は極渦内でオゾン破壊が進み,オゾン濃度の南北勾配が下部成層圏で大きくなる。そこでSTPWが増幅されると,オゾン波が大きく増幅される。増幅されたオゾン波は東西非一様な加熱により,下部成層圏で新たなSTPWを生成する可能性がある。こうして下部成層圏で生成されたSTPWが,南半球でSSWを引き起こし,その季節性を特定することに寄与している可能性がある。