日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2022年5月27日(金) 10:45 〜 12:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、コンビーナ:坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、コンビーナ:石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、座長:持田 陸宏(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、長浜 智生(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

12:00 〜 12:15

[AAS11-11] 紫外線計測データに基づく体内ビタミンD生成量の推定と妊婦の血液中ビタミンD濃度との相関解析

*中島 英彰1,2、佐々木 徹1、坂本 優子3、本田 由佳4 (1.国立研究開発法人国立環境研究所、2.東北大学大学院環境科学研究科、3.順天堂大学附属練馬病院、4.慶應義塾大学政策・メディア研究科)

キーワード:ビタミンD、太陽紫外線、UV-B、25(OH)D、オゾンホール、BDHQ

最近、日本人の特に若年女性の間でビタミンD(VD)不足が問題となってきている。その原因の一つとして1980年代の南極オゾンホールの発見以降、紫外線の有害性が強調されすぎてきたことが挙げられる。本来適度な日光浴を普段の生活の中に取り入れることで、VDは十分生成できるはずであるが、その指針は国内各機関も現時点では明確に示せていない。申請者らはこれまでに、太陽紫外線から1日の生活に必要なVDを体内で生成するために必要な日光浴時間を計算で求め、実際の紫外線観測データから日本11か所において「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/index.html)」として研究所HPから提供するシステムの構築を進めてきた。本研究では関東の大学病院産婦人科を受診した約300人の妊婦を対象に、アンケートによって得た直近の日光浴時間と紫外線観測データから、血液中VD濃度を推定し、実際の測定値との相関関係の導出を目指した。

今回の解析では、2018年8月から2019年10月に妊婦検診を受けた妊娠28週の妊婦309人のデータを解析した。対象者が食事から摂取したVD摂取量はBDHQ調査票から推計し、紫外線からのVD摂取量は、調査日前3, 7, 14, 30日間の平均値を導出した。その結果得られたVD摂取量と、妊婦の血液から測定した、体内ビタミンD量の指標となる25(OH)D量の相関を解析した。図1(a)に、太陽UV-B強度の弱い時期の食事からのビタミンD摂取量(BDHQ)と、血中ビタミンD濃度の指標である25(OH)Dとの相関を示す。この時期には有意な正相関(R=0.30)が得られた一方、日光からのビタミンD生成量との相関は高くはなかった。また図1(b)には、太陽UV-B強度の強い時期の過去14日平均の皮膚におけるビタミンD生成量と25(OH)Dとの相関を示す。この時期には高い正相関が(R=0.51)得られた。これらの結果は、季節によって体内ビタミンDの補給の状況が異なるという結果を示唆している。