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[AAS11-14] 地上と衛星リモートセンシングを複合利用した雷起源窒素酸化物の検出方法の検討
キーワード:雷NOx、地上・衛星観測
近年、気候変動や大気汚染への懸念が高まっている。短寿命気候強制因子のひとつである窒素酸化物(NOx)は、そのものが大気汚染物質であるとともに、オゾンなどの光化学オキシダントの前駆体となり、地球温暖化や人体・農作物などにも影響を及ぼす。このような重要性を持つNOxの中上部対流圏における支配的な放出源は雷由来のNOx(Lightning NOx;LNOx)である。LNOxの大気への放出量は全NOx放出量のおよそ10%にも及ぶと推定されている。しかしながら、LNOxの評価のための観測データは限られている。この問題を克服するために、本研究では地上リモートセンシング観測MAX-DOAS (Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopy)と衛星観測TROPOMI(TROPOspheric Monitoring Instrument)を複合利用したLNOxの検出方法を2021年7月26日から8月8日にかけて行われた千葉集中観測キャンペーンに着目して検討した。両観測の対流圏NO2カラム濃度データを解析したところ、7月31日と8月7日では対流圏NO2カラム濃度が比較的低く、下部対流圏でも人為起源からの放出の影響を強く受けていないことが分かった。また、両日ともTROPOMIの対流圏NO2カラム濃度がMAX-DOASよりも大きい傾向があった。これは、MAX-DOASによる観測は中上部対流圏への感度が低いため、中上部対流圏でNO2の増大が起きたことを反映していると考えられた。このことを確かめるために雷監視システム(LIDEN)のデータと後方流跡線解析を用いて検証を行った。7月31日は、高度12、13 kmの空気塊が観測の24-30時間前に雷が発生した場所を通過しており、8月7日は、高度14 kmの空気塊が観測の1時間前に雷が発生している場所を通過していたことが分かった。このことから、同定された中上部対流圏のNO2濃度の増大は、LNOxの影響を受けている可能性があることが分かった。