16:00 〜 16:15
[AAS11-19] SIFT-MSによる郊外地域でのVOCs測定法の検討
キーワード:揮発性有機化合物、選択イオンフローチューブ質量分析計、ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器
大気観測において多成分の揮発性有機化合物(VOC)の測定はGC/FIDまたはGC/MSを用いた方法が一般的であるが、大気をサンプリングして濃縮する過程が必要であり時間分解がよくない。また、極性分子も濃縮過程でロスをすることがあり含酸素揮発有機化合物(OVOC)などの測定は難しい。そのため、20年ほど前から陽子移動反応質量分析計(PTR-MS)も併用して使われるようになっている。PTR-MSでの観測ではリアルタイムの高時間分解能の測定が可能であり、また濃縮せず測定しているため極性分子も測定できる。しかし、VOCの多くを占めるアルカンなどはプロトンアフィニティが小さいため検出ができないという欠点がある。選択イオンフローチューブ質量分析計(SIFT-MS)もPTR-MSと同様な測定法ではあるが、イオン化をH3O+, NO+, O2+の3種類で行うことができ、アルカンなどもイオン化して検出することが出る。しかし、これまであまり実大気の観測に置いて利用されることはなかった。その理由として水蒸気の影響を受けやすいなど、イオン反応での生成物の解釈がやや複雑になってくることがあげられる。
そのため、SIFT-MSを実大気測定で利用をすること目的として、実大気でのSIFT-MSとGC/FIDでのVOCの比較測定を行った。
2021年10月26日から11月4日にかけて東京都八王子市の東京都都立大学キャンパス内において、SIFT-MS(VOICE200ultra, Syft Technologies社)による外気測定を行い、同時におこなったGC/FIDによる定期的な測定と比較をした。また、SIFT-MSのみで測定シグナルが得られるOVOCやアンモニアについては絶対濃度の評価はできないが、相対的な変動について考察をした。
まず、SIFT-MSでの測定で、どこをゼロ点にするのか難しため、窒素ガス、ゼロガス発生器、加湿したゼロガスなどでシグナル応答を確認した。外気の測定と湿度が異なるゼロガスを測定するとPrimaryイオンやそのクラスターで水の同位体に相当する質量数の物質に影響が強くでてしまい、例えばアンモニアに相当する質量数(m/z=18)がゼロガス測定時にかなりの高濃度で計算上は濃度算出されてしまうなどの問題が確認できた。なるべく測定する外気とゼロガスで水蒸気の状況を同様にする必要があることがわかった。
SIFT-MSの外気測定の結果をGC-FIDのものと比較して相関プロットをとり、どのリージェントイオン(H3O+, NO+, O2+)を用いて濃度算出をするのが良いのかも確認した。芳香族炭化水素については良好な相関が得られ、また文献のイオン反応測定数を用いておおよそ1に近い傾きが得られた。植物起源のisopreneは秋季で外気中の濃度が低めのためばらつきはあるが、相関と1に近い傾きとなった。Monoterpene類については相関はあるが、傾きがSIFT-MSのほうが数倍高い濃度で算出された。アルケンについては比較的高濃度となるものについてはある程度良い相関は見られるが傾きに差がでてしまった。アルカンについてもある程度の相関が得られたが、傾きは1からずれるものがみられた。
今回は同時に既存の測定を行っておらず比較はできないのだが、OVOCやアンモニアにおいても、予想されるような日内濃度変動をしており、相対的には整合性のある結果となっていた。
これらの結果から、SIFT-MSによる実大気の外気測定は、GCによる同時測定で絶対濃度を補正してやる必要はあるが、多くのVOCで濃度変動はとらえられていた。SIFT-MSは十分実大気観測で利用することが可能であることが確認できた。
そのため、SIFT-MSを実大気測定で利用をすること目的として、実大気でのSIFT-MSとGC/FIDでのVOCの比較測定を行った。
2021年10月26日から11月4日にかけて東京都八王子市の東京都都立大学キャンパス内において、SIFT-MS(VOICE200ultra, Syft Technologies社)による外気測定を行い、同時におこなったGC/FIDによる定期的な測定と比較をした。また、SIFT-MSのみで測定シグナルが得られるOVOCやアンモニアについては絶対濃度の評価はできないが、相対的な変動について考察をした。
まず、SIFT-MSでの測定で、どこをゼロ点にするのか難しため、窒素ガス、ゼロガス発生器、加湿したゼロガスなどでシグナル応答を確認した。外気の測定と湿度が異なるゼロガスを測定するとPrimaryイオンやそのクラスターで水の同位体に相当する質量数の物質に影響が強くでてしまい、例えばアンモニアに相当する質量数(m/z=18)がゼロガス測定時にかなりの高濃度で計算上は濃度算出されてしまうなどの問題が確認できた。なるべく測定する外気とゼロガスで水蒸気の状況を同様にする必要があることがわかった。
SIFT-MSの外気測定の結果をGC-FIDのものと比較して相関プロットをとり、どのリージェントイオン(H3O+, NO+, O2+)を用いて濃度算出をするのが良いのかも確認した。芳香族炭化水素については良好な相関が得られ、また文献のイオン反応測定数を用いておおよそ1に近い傾きが得られた。植物起源のisopreneは秋季で外気中の濃度が低めのためばらつきはあるが、相関と1に近い傾きとなった。Monoterpene類については相関はあるが、傾きがSIFT-MSのほうが数倍高い濃度で算出された。アルケンについては比較的高濃度となるものについてはある程度良い相関は見られるが傾きに差がでてしまった。アルカンについてもある程度の相関が得られたが、傾きは1からずれるものがみられた。
今回は同時に既存の測定を行っておらず比較はできないのだが、OVOCやアンモニアにおいても、予想されるような日内濃度変動をしており、相対的には整合性のある結果となっていた。
これらの結果から、SIFT-MSによる実大気の外気測定は、GCによる同時測定で絶対濃度を補正してやる必要はあるが、多くのVOCで濃度変動はとらえられていた。SIFT-MSは十分実大気観測で利用することが可能であることが確認できた。