日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (8) (Ch.08)

コンビーナ:内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、コンビーナ:坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、コンビーナ:石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、座長:内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)

11:00 〜 13:00

[AAS11-P02] 最近の全球オゾン全量トレンドの重回帰分析

*鈴木 湧平1村田 功2,1 (1.東北大学大学院理学研究科、2.東北大学大学院環境科学研究科)


キーワード:オゾン、重回帰分析、トレンド

フロン類によるオゾン層破壊は1970年代から始まった。これは、人為的に放出されたフロン類などが成層圏まで運ばれ、触媒作用でオゾンを破壊する塩素原子が放出されたことによる [Chipperfield et al., 2017]。1987年のモントリオール議定書とその改正の効果により、人為的なオゾン層破壊物質の大気中への放出は減少している [Chipperfield et al., 2017]。それに伴い、オゾン全量の回復が期待されている。しかし、中低緯度では力学的要因による年々変動など他の変動要因が大きいので、はっきりした回復傾向は見られていない[WMO, 2019]。
最近のオゾン全量トレンドを調べるため、我々は全球のオゾン全量の経年変化を解析した。本研究ではWorld Ozone and Ultraviolet Radiation Data Centre (WOUDC)のオゾン全量データを使用し、欠測期間の短い43地点を選んだ。まずは、2000年以降の約20年分のトレンドについて最小二乗法を用いて調べた。経年変動は直線でフィッティングし、季節変動は1/2年周期までを考慮した。95 %信頼区間を用いて統計的に有意かどうか調べた。20年分を見てみたところ、2015年付近で変化している地点が多くあった。そこで2015年付近で2つのトレンドに分けて解析した。その結果、北半球では2015年あたりから減少傾向が見られ、低緯度では2017年あたりから増加傾向が見られた。低緯度のこの20年間の経年変化は、太陽11年周期の位相とほぼ一致した。ここまでの解析では、オゾン全量に影響を与える太陽11年周期などを考慮していなかった。
そこで、次に既知の変動要因(予測因子)を考慮するため、線形重回帰 (MLR)モデルを用いて解析を行った。本研究では、Long-term Ozone Trends and their Uncertainties in the Stratosphere (LOTUS)グループが提供しているMLRモデルを用いて、既知の変動要因を考慮した。まず手始めに、つくば (36 °N)とナタール (6 °S)のオゾン全量について、LOTUSの標準的な予測因子で解析した。考慮した予測因子は、エルニーニョ/南方振動 (ENSO)、太陽11年周期、準2年周期振動 (QBO)、火山性エアロゾル、等価実効成層圏塩素 (EESC)である。各予測因子の標準偏回帰係数を計算したところ、つくばではQBOとEESCの影響が大きく、ナタールでは太陽11年周期とQBOの影響が最も大きい結果になった。今回、MLR モデルの当てはまりの良さの指標として自由度調整済み決定係数を用いた。これはモデルの当てはまりが良ければ1に近づくはずである。つくばでは0.047、ナタールでは0.586となり、特につくばでは考慮していない他の因子を考えないとオゾンの経年変動を説明できないという結果になった。オゾントレンドの要因を詳しく調べるため、渦位 (PV)など新たな予測因子を考慮した上で、他の地点の解析も行う予定である。