日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 大気化学

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (8) (Ch.08)

コンビーナ:内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、コンビーナ:坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、コンビーナ:石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、座長:内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)

11:00 〜 13:00

[AAS11-P12] スモッグチャンバーを用いたNOxおよびVOCsに対するオゾン生成感度実験

*宮武 宏輔1坂本 陽介1,2、梶井 克純1,2佐藤 圭2 (1.京都大学、2.国立環境研究所)


キーワード:光化学オキシダント、オゾン、スモッグチャンバー、窒素酸化物、揮発性有機化合物、化学スキーム

大気汚染物質としてだけでなく、近年では短寿命気候強制力因子としても知られる対流圏オゾンは、揮発性有機化合物(VOC)やNOxを前駆物質とする光化学反応によって生成される。ここ数十年の観測によると、これらの前駆物質の濃度は減少しているが、オゾン濃度は増加していることが分かっている。これは、オゾン生成量は前駆物質の濃度に非線形的に依存するためであると知られており、このことが最近のオゾン傾向を説明すると期待されている。従って、この非線形依存性の寄与を推定し、今後のオゾンの緩和制御の傾向を予測するためには、その化学メカニズムを正確に理解することが必要である。そこで本研究では、NOx や VOC に対するオゾン生成感度を予測するための正確な化学モデルを得ることを目的とし、最初のテストケースとして、国立環境研究所のスモッグチャンバーを用いてプロペンの光化学酸化反応時のNOxやVOCに対するオゾン生成感度を調べた。
実験は、長光路FT-IRを装備した6m³のスモッグチャンバーを用いて、1気圧の室温条件で実施した。プロペン(199-455 ppb)とNO(91-253 ppb)を前駆物質としてチャンバー内に導入した。 光化学反応を開始させるOHラジカル源としてはIPONO(≤7 ppb)も導入した。 その後、ソーラーシミュレーターを起動し、光照射による光化学反応を開始した。 照射実験は6時間から8時間行った。その間、チャンバー内の反応物および生成物の濃度は、15分ごとにFT-IRで測定した。一連の実験は前駆物質の初期導入時の濃度条件を変えて行い、 一部の施行では、照射開始から3時間後にプロペンまたはNOを追加導入する実験も行った。オゾン生成量は潜在的なオゾン生成量(ポテンシャルオゾン、O₃ + NO₂)で評価し、化学モデルによるシミュレーションと比較した。
実験の結果、典型的なオゾン生成量の初期NOとプロペン濃度への依存性が定性的に示された。例えば、プロペンの初期濃度が 400ppb、NOが100ppbの場合、オゾン生成はNOx に制御され、VOC 濃度の添加はオゾン生成にほとんど影響を与えず、NOの添加によりオゾン生成量が増加した。一方、プロペンの初期濃度が200ppb、NOが200ppbの場合、オゾン発生量はVOC制御され、VOCの添加によりオゾン発生量は上昇し、NOの添加によりオゾン発生量は減少した。さらに、その結果をモデルシミュレーションと定量的に比較し、 NOxとVOCに対するオゾン生成感度を予測する基本性能を評価した。