日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC28] 雪氷学

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、コンビーナ:石川 守(北海道大学)、砂子 宗次朗(防災科学技術研究所)、コンビーナ:舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、座長:石川 守(北海道大学)


14:15 〜 14:30

[ACC28-02] 飛驒山脈,杓子岳北カールにおける永久凍土分布可能性の評価

*瀧ヶ﨑 愛理1奈良間 千之1 (1.新潟大学)


キーワード:山岳永久凍土、岩石氷河、差分干渉SAR解析、地中レーダー、電気比抵抗

氷と岩屑が入り混じる堆積地形である岩石氷河は,その内部に永久凍土が存在しており,山岳永久凍土の指標地形となっている.岩石氷河の厚い岩屑の内部に永久凍土が存在する場合,塑性変形によって流動が起こるため,流動の確認によって山岳永久凍土の存在の可能性を示すことができる.飛驒山脈の高山帯では,永久凍土の存在条件である“地温が2年以上 0℃以下”の条件を満たす山域があることから,山岳永久凍土が分布する可能が指摘されている.その代表例として,白馬岳周辺や槍穂高連峰の岩石氷河が挙げられる(Matsuoka and Ikeda,1998;青山,2002;Ishikawa et al.,2003).しかしながら,現在,飛驒山脈において現成の山岳永久凍土は立山の内蔵助カールでしか確認されておらず(福井・岩田,2000),中部山岳における山岳永久凍土の分布の全貌やその形成・維持環境は明らかでない.本研究では,山岳永久凍土の分布可能性が指摘されている飛驒山脈の杓子岳北カールの岩石氷河において,山岳永久凍土の分布可能性について考察した.
 2か月間,1年間,2年間の観測期間のSARデータを用いて差分干渉SAR解析を実施したところ,どの期間においても岩石氷河の地表面変化が確認された.移動量は,1年間で数㎝,2年間で10数㎝と継続して流動が起こっていることが明らかになった.これらの結果は,岩石氷河内部に永久凍土が存在している可能性が高いことを示唆する.
 次に差分干渉SAR解析により最も流動が大きいと考えられる岩石氷河末端から上流側100mの場所において地中レーダー探査をおこなった.その結果,10~12mの深度に基盤を確認でき,内部は3層構造になっていた.この結果より,岩石氷河の深度は12m程度であり,表層は珪長岩の角礫層,その内部において上部と下部は礫まじりの違う物質で構成されていることが明らかになった.
 地中レーダー探査において観測された岩石氷河内部の3層がどのような物質で構成されているのかを確認するために,同じ測線において二次元電気比抵抗探査をおこなった結果,地表面から深度10m付近の範囲で永久凍土の指標である10^4~10^5Ωmの比抵抗値を示す部分が検出された.また,深度12m以下では8×10^3Ωm以下の低い比抵抗値を示した.この結果から,岩石氷河の内部に山岳永久凍土が存在する可能性が高いと考えられる.
 
引用文献
青山(2002):地学雑誌,111,583-593.
Ishikawa(2003):Zeitschrift für Geomorphologie Supplementary Issues 130,99-116.
Matsuoka and Ikeda (1998): Annual report of the Institute of Geoscience, the University of Tsukuba, 19-25.
福井・岩田(2000):雪氷,62,1,23-28.