日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG35] 熱帯におけるマルチスケール大気海洋相互作用

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:Richter Ingo(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、今田 由紀子(気象庁気象研究所)、コンビーナ:大庭 雅道(電力中央研究所)、座長:今田 由紀子(気象庁気象研究所)、Ingo Richter(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

15:50 〜 16:10

[ACG35-08] 海洋学の10年展望2021:熱帯域

★招待講演

*土井 威志1安中 さやか2、高橋 一生3渡辺 路生2東塚 知己4,1、栗原 晴子5 (1.海洋研究開発機構付加価値情報創生部門、2.海洋研究開発機構地球環境部門、3.東京大学大学院農学生命科学研究科、4.東京大学大学院理学系研究科、5.琉球大学理学部)

キーワード:将来構想、分野横断、ENSO、予測

熱帯域に関する近年の研究の進展をレビューするとともに,今後10年程度で取り組むべき海洋研究の方向性に関して,物理・化学・生物の各分野を横断して論じた。特に,ENSOに焦点をあてた。ENSOの予測は,近年の物理的理解の進展によりある程度可能になった。一方,ENSOが,海洋の炭素吸収能,物質循環,生物生産,生物多様性などにどのように影響するのかについては十分に理解されていない。さらに,長期的な気候の変化に伴って進行する熱帯海洋の水温上昇・酸性化・貧酸素化に,ENSOの影響が重なることで,海洋生態系がより深刻な影響をうける可能性も指摘されている。このような事態に備えるために,ENSOによって海洋システム全体がどのように変動するのか理解を深め,高精度で予測することが,社会要請と相まって,益々重要になるであろう。今後10年間では特に,Biogeochemical (BGC) Argoフロートによる観測データと地球システムモデルを両輪とした海洋システム研究の展開,ならびに船舶・係留ブイ観測や現場実験・観測など現地調査に基づくプロセス研究の拡充を進め,双方の知見を互いにフィードバックする必要がある。ENSOに伴う経年的な変動予測精度が最も高い熱帯太平洋は,海洋システムの真の統合的理解と予測研究を進めるための最適な実証基盤である。