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[ACG38-08] 夏季日本域における線状降水帯に特化した機械学習降水推定プロダクトの開発
キーワード:降水、静止気象衛星、機械学習
静止気象衛星の広域,高頻度観測は,衛星による高頻度の全球降水推定を行うために必要不可欠である.静止気象衛星を用いた伝統的な降水推定手法の多くは,波長10.4μmの赤外(IR)バンドのみを用いてきたが,単一のIRバンド観測から得られる雲頂高度情報に依存した降水推定は,比較的背の低い雲からの豪雨を過小評価することが報告されている.第三世代以降の静止気象衛星の打ち上げにより,現在ではより多くのIRバンド観測が広い範囲で利用可能になってきている.本研究ではひまわり8号の持つ9つのIRバンドとGPM KuPRの同時観測データにRandom Forest機械学習法を用い,静止気象衛星観測ペースの高頻度降水推定プロダクトであるひまわり8号降水推定アルゴリズム(HPA; Hirose et al. 2019)を作成した.レーダ・アメダス解析雨量を用いた精度検証では,ひまわり8号で初めて静止気象衛星での利用が可能になった3つの水蒸気バンド(6.2, 6.9, 7.3μm)が線状降水帯の推定に特に有効であることが示された.さらに機械学習の訓練データを夏季日本付近に限定して収集することで,しばしば豪雨災害を引き起こす線状降水帯の推定に特化したHPAの開発を進めている.令和2~3年の夏季豪雨に対する事例検証結果では,HPAは九州域における線状降水帯を定性的によく推定できていた.HPAは降水強度の最大値を過小評価する傾向が見られたため,ヒストグラムマッチングを用いた推定降水強度の補正を行い,統計的補正手法が極端降水事例の過小評価にどの程度有効であるか検証を行った.