11:00 〜 13:00
[ACG40-P02] 熱ストレス下における造礁サンゴの光合成と光阻害
キーワード:光阻害、サンゴの白化、総光合成速度
導入
地球温暖化に伴う海水温の上昇や人為的な撹乱が原因で、これまでにサンゴ礁は大規模な白化現象を経験してきた。白化とは共生する褐虫藻がサンゴから排出されることである。サンゴと共生する褐虫藻は光条件下においてサンゴが必要とする栄養の大部分を提供するため、白化現象によってサンゴは主要なエネルギー生産源を喪失する。熱ストレス等に起因する過剰なROSが発生することで白化が起こると考えられている。このROSは褐虫藻の光合成における電子伝達の過程で生じる余剰電子が周囲の酸素などと反応することで生じる。光阻害は、光合成で流れる電子伝達の量を低下させることで、過剰なエネルギーが光化学系やルビスコに流れるのを防ぐ仕組みであり、ROSの放出量を抑えるメカニズムであると考えられる。本研究では熱ストレス時における光阻害の役割を知るために、総光合成速度、Y(Ⅱ)の測定を行った。
(材料・方法)
本研究ではエンタクミドリイシ(Acropora solitaryensis)とフタマタハマサンゴ(Porites heronensis)を用いた。この二種のサンゴは、下田近海に生息し、生理学的な特性が異なるため実験に使用された。実験で用いるサンゴは段階的に温度と光量を上昇させることで馴致させた。実験は室内水槽で行われ、一定の水流のもとO2 マイクロセンサーとPAM(Pulse Amplitude Modulation)の測定等を行った。O2 マイクロセンサーは総光合成速度(light dirk shift)と純光合成速度の測定に用いた。また、サンゴの組織における総光合成速度の測定場所に関する条件検討では、サンゴ表面から骨格までの深さごとの総光合成速度の測定が行われた。PAMは光阻害の程度を理解するためにY(Ⅱ)の測定に用いた。水温を段階的に上昇させながら26℃, 30℃, 30℃を1週間維持したサンゴで測定を行った。光量は1日のうちに段階的に変化させ、光阻害時のサンゴ表面における総光合成速度・純光合成速度・Y(Ⅱ)・褐虫藻密度の測定を行った。
結果・考察
Light dark shift法によるサンゴ表面及び組織内での総光合成速度測定の結果、15 µm(組織の厚さは50 µm)をピークに徐々に総光合成速度は減少する傾向が見られた。しかし、表面の総光合成速度とサンゴ組織の厚さの積は内部で測定された総光合成速度の総計と比較して大きな差は見られなかった。このことから、サンゴの表面での測定から、総光合成速度を推定できることを明らかにした。
最も熱ストレスを与えた30℃(1週間維持)では、どちらのサンゴも白化し、フタマタハマサンゴについては褐虫藻数が著しく減少した。総光合成速度と純光合成速度は光量の増加とともに上昇したが、強光下では総光合成速度は一定の速度を超えなかった。また、熱ストレスの暴露時においては総光合成速度は減少した。Y(Ⅱ)は強光下において減少し、光阻害が生じていることを示した。熱ストレスの暴露とともにY(Ⅱ)が下がることから、熱ストレスにより光阻害が起きやすくなることを示した。今回の実験で、光阻害によってROSの生産が抑制されたことが推測されるが、褐虫藻密度も減少していることから、サンゴは熱ストレスのダメージを抑えるために光阻害と褐虫藻数の制御の両方を用いているがこと考えられる。
地球温暖化に伴う海水温の上昇や人為的な撹乱が原因で、これまでにサンゴ礁は大規模な白化現象を経験してきた。白化とは共生する褐虫藻がサンゴから排出されることである。サンゴと共生する褐虫藻は光条件下においてサンゴが必要とする栄養の大部分を提供するため、白化現象によってサンゴは主要なエネルギー生産源を喪失する。熱ストレス等に起因する過剰なROSが発生することで白化が起こると考えられている。このROSは褐虫藻の光合成における電子伝達の過程で生じる余剰電子が周囲の酸素などと反応することで生じる。光阻害は、光合成で流れる電子伝達の量を低下させることで、過剰なエネルギーが光化学系やルビスコに流れるのを防ぐ仕組みであり、ROSの放出量を抑えるメカニズムであると考えられる。本研究では熱ストレス時における光阻害の役割を知るために、総光合成速度、Y(Ⅱ)の測定を行った。
(材料・方法)
本研究ではエンタクミドリイシ(Acropora solitaryensis)とフタマタハマサンゴ(Porites heronensis)を用いた。この二種のサンゴは、下田近海に生息し、生理学的な特性が異なるため実験に使用された。実験で用いるサンゴは段階的に温度と光量を上昇させることで馴致させた。実験は室内水槽で行われ、一定の水流のもとO2 マイクロセンサーとPAM(Pulse Amplitude Modulation)の測定等を行った。O2 マイクロセンサーは総光合成速度(light dirk shift)と純光合成速度の測定に用いた。また、サンゴの組織における総光合成速度の測定場所に関する条件検討では、サンゴ表面から骨格までの深さごとの総光合成速度の測定が行われた。PAMは光阻害の程度を理解するためにY(Ⅱ)の測定に用いた。水温を段階的に上昇させながら26℃, 30℃, 30℃を1週間維持したサンゴで測定を行った。光量は1日のうちに段階的に変化させ、光阻害時のサンゴ表面における総光合成速度・純光合成速度・Y(Ⅱ)・褐虫藻密度の測定を行った。
結果・考察
Light dark shift法によるサンゴ表面及び組織内での総光合成速度測定の結果、15 µm(組織の厚さは50 µm)をピークに徐々に総光合成速度は減少する傾向が見られた。しかし、表面の総光合成速度とサンゴ組織の厚さの積は内部で測定された総光合成速度の総計と比較して大きな差は見られなかった。このことから、サンゴの表面での測定から、総光合成速度を推定できることを明らかにした。
最も熱ストレスを与えた30℃(1週間維持)では、どちらのサンゴも白化し、フタマタハマサンゴについては褐虫藻数が著しく減少した。総光合成速度と純光合成速度は光量の増加とともに上昇したが、強光下では総光合成速度は一定の速度を超えなかった。また、熱ストレスの暴露時においては総光合成速度は減少した。Y(Ⅱ)は強光下において減少し、光阻害が生じていることを示した。熱ストレスの暴露とともにY(Ⅱ)が下がることから、熱ストレスにより光阻害が起きやすくなることを示した。今回の実験で、光阻害によってROSの生産が抑制されたことが推測されるが、褐虫藻密度も減少していることから、サンゴは熱ストレスのダメージを抑えるために光阻害と褐虫藻数の制御の両方を用いているがこと考えられる。