11:00 〜 13:00
[ACG40-P05] 北海道アマモ集団を対象とした種子の発芽に対する水温の影響評価
キーワード:アマモ、温暖化、室内実験
アマモは北太平洋の温帯域から極域まで広く分布する海草であり、他の生物への住み家の提供、水質浄化、底質安定化、炭素固定といった多くの生態系サービスを供給している。本種は温暖化を始めとした気候変動の影響を受けており、これまでに海水温上昇に対する成体の成長や生理反応に対して多くの研究が進められてきたが、種子の発芽などの初期生活史への影響に関する知見は不足している。
そこで本研究では日本北部のアマモ場集団を対象に水温に対する種子発芽の反応を2つの室内実験で調べた(実験1,2)。2021年6月に北海道厚岸および室蘭において種子を付けた生殖株を採集し、追熟後の種子から重量密度の高いものを選別して用いた。実験1では水産技術研究所・神栖拠点の恒温室において、ろ過海水を入れた3基の100Lタンクを用いて、北海道、東北、東京湾を想定した水温処理区を設定した。各処理区には厚岸の種子を1つずつ入れた57個のポッドを設置し(n=57)、2021年10月14日に実験を開始した。実験期間中は3処理区の水温を恒温室の空調と水槽用ヒーターで調整し、各地域の水温の季節変化に準じて、水温を変化させた。実験2では海洋生物環境研究所中央研究所において、100Lタンク2基に現地のろ過かけ流し海水を流し、ろ過海水温(対照区)、ろ過海水温+3℃(昇温区)の2つの水温処理区を設定した。各処理区に厚岸または室蘭の種子を1つずつ入れた100個のポッド(厚岸n=80、室蘭n=20)を設置して、2021年9月10日に実験を開始した。両実験で種子の観察は定期的に実施し、水温及び塩分を常時モニタリングした。
2022年2月14日までの実験結果について報告する。この日までに実験1では北海道処理区(1.8–16.0℃)で種子の発芽はみられなかったが(0%)、東北処理区(8.5–17.6℃)で5個体(8.8%)、東京湾処理区(10.3–19.5℃)で4個体(7.0%)が発芽した。一方、海生研では、対照区(10.5–25.5℃)で3個体(3.0%)、昇温区(14.3–27.9℃)で8個体(8.0%)の発芽が見られ、両実験とも水温が高い処理区の方が発芽率が高い傾向にあった。
これらの結果から海水温の上昇は北海道のアマモ集団の種子の発芽時期を早める可能性があることがわかった。このようなフェノロジーの変化はアマモの季節的消長を変えるとともにそこに生息する生物に大きな影響を与える可能性がある。
そこで本研究では日本北部のアマモ場集団を対象に水温に対する種子発芽の反応を2つの室内実験で調べた(実験1,2)。2021年6月に北海道厚岸および室蘭において種子を付けた生殖株を採集し、追熟後の種子から重量密度の高いものを選別して用いた。実験1では水産技術研究所・神栖拠点の恒温室において、ろ過海水を入れた3基の100Lタンクを用いて、北海道、東北、東京湾を想定した水温処理区を設定した。各処理区には厚岸の種子を1つずつ入れた57個のポッドを設置し(n=57)、2021年10月14日に実験を開始した。実験期間中は3処理区の水温を恒温室の空調と水槽用ヒーターで調整し、各地域の水温の季節変化に準じて、水温を変化させた。実験2では海洋生物環境研究所中央研究所において、100Lタンク2基に現地のろ過かけ流し海水を流し、ろ過海水温(対照区)、ろ過海水温+3℃(昇温区)の2つの水温処理区を設定した。各処理区に厚岸または室蘭の種子を1つずつ入れた100個のポッド(厚岸n=80、室蘭n=20)を設置して、2021年9月10日に実験を開始した。両実験で種子の観察は定期的に実施し、水温及び塩分を常時モニタリングした。
2022年2月14日までの実験結果について報告する。この日までに実験1では北海道処理区(1.8–16.0℃)で種子の発芽はみられなかったが(0%)、東北処理区(8.5–17.6℃)で5個体(8.8%)、東京湾処理区(10.3–19.5℃)で4個体(7.0%)が発芽した。一方、海生研では、対照区(10.5–25.5℃)で3個体(3.0%)、昇温区(14.3–27.9℃)で8個体(8.0%)の発芽が見られ、両実験とも水温が高い処理区の方が発芽率が高い傾向にあった。
これらの結果から海水温の上昇は北海道のアマモ集団の種子の発芽時期を早める可能性があることがわかった。このようなフェノロジーの変化はアマモの季節的消長を変えるとともにそこに生息する生物に大きな影響を与える可能性がある。