日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG43] 北極域の科学

2022年5月27日(金) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Ono Jun(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、コンビーナ:両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、座長:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、小野 純(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

09:00 〜 09:15

[ACG43-01] 大規模アンサンブルモデル実験データセットを用いた北極温暖化増幅時における下部対流圏温度移流の役割

*堀 正岳1吉森 正和1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:極温暖化増幅、温度移流

北極温暖化増福時における下部対流圏の温度移流の役割を明らかにすることを目的として、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を用いた調査を行った。本データセットは観測の海面水温(SST)を境界条件として大気大循環モデルを用いて計算された過去実験と、SSTのトレンドを除去し温室効果ガス濃度などの外部強制因子を産業革命前の条件に固定した非温暖化実験がそれぞれ100メンバ、また全球平均温度が2Kあるいは4K上昇した将来予測実験におけるSSTを用いた実験がそれぞれ54メンバと90メンバ、1メンバにつき60年存在する。ここでは非温暖化実験(HPB-NAT)を基準として、気候値の場が過去実験(HPB)と将来実験(HFB-2K / 4K)に変化した際に温度移流が気温変化に与える寄与を調査する。平均場の変化に伴う移流の変化は風の変化に伴う力学的効果と、気温の変化にともなう熱力学的効果、およびそれぞれの高次項の寄与に分解して評価する。HPB実験下においては非温暖化実験に対して移流は北極全体として正の偏差をもっており、北極全体の昇温に寄与しており、このシグナルは特に北大西洋域の海氷縁とユーラシア大陸沿岸において強い傾向があった。平均場の変化はバレンツ・カラ海およびカナダ多島海における正の移流の偏差をもたらしており、これは風の変化にともなう力学的効果の寄与が大きかった。それに対して熱力学的効果は、温暖化にともなう温度傾度の弱化に伴って負のシグナルをユーラシア大陸上でもっていることが示された。本発表ではさらに2K / 4K将来予測実験における結果と、これらの温度移流を維持している循環場の影響についてさらに議論を行う。