日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG43] 北極域の科学

2022年5月27日(金) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Ono Jun(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、コンビーナ:両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、コンビーナ:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、座長:堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、小野 純(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

10:15 〜 10:30

[ACG43-06] CMIP6モデルにおけるバレンツ-カラ海の海氷減少とガルフストリーム域の昇温との関係

*山上 遥航1渡部 雅浩2森 正人3小野 純1 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学大気海洋研究所、3.九州大学応用力学研究所)

キーワード:バレンツ-カラ海、ガルフストリーム、CMIP6、気候モデル

バレンツ-カラ海における冬季の海氷は北極域で特に減少しており、その変動は北半球の気候変動に影響を与える(e.g. Mori et al. 2014)。CMIP5モデルでは、バレンツ-カラ海における冬季海氷減少トレンドのマルチモデル平均が観測よりも小さく、モデル間に大きな分散があると報告されている(Li et al. 2017)。近年、バレンツ海が「大西洋化」している観測結果や(Polyakov et al. 2017)、ガルフストリームのSST変動に起因する大気偏差がバレンツ海の海氷変動に影響することが報告されている(Sato et al. 2014)。したがって、北大西洋を起源とした変動がバレンツ-カラ海の海氷減少を駆動している可能性が考えられ、我々は気候モデルMIROC6を用いた数値実験を行った (2021年度日本海洋学会秋季大会)。その結果、ガルフストリーム流域のSSTトレンドが過小評価されているために、バレンツ-カラ海の冬季海氷減少トレンドが過小に表現されている可能性が示唆された。そこで、本発表ではCMIP6マルチモデルアンサンブルを活用し、バレンツ-カラ海の海氷とガルフストリーム域のSSTとの関係性をより検証する。
はじめに、CMIP6参画の39モデルにおける過去再現実験の解析を行なった。1970-2014での、バレンツ-カラ海の海氷密接度(SIC)とガルフストリーム域のSSTトレンド(以降、それぞれSIC,SSTトレンドと呼ぶ)を調べると、SIC(SST)トレンドのマルチモデル平均は観測での減少(上昇)トレンドを過小評価していた。また、SICとSSTトレンドの間に、有意な負の相関関係が見られた(r=-0.59)。すなわち、CMIP6モデルにおいては、ガルフストリーム域のSST上昇トレンドが大きいほど、バレンツ-カラ海のSIC減少トレンドが大きいことを意味する。
次に、CMIP6モデル間におけるSICトレンドとSSTトレンドの関係性が、外部強制に対する応答なのか内部変動によるものなのかを調べるために、10メンバー以上のアンサンブル数が利用可能な14のモデルを用いた解析を行なった。その結果、アンサンブル平均のSICトレンドとSSTトレンドの間に有意な負の相関関係が見られた(r=-0.75)。これは、強制応答成分のSICトレンドの56%がガルフストリーム域のSSTトレンドによって説明可能なことを意味する。一方、SICトレンドとSSTトレンドの内部変動成分においては、4つのモデルでのみ有意な相関関係が見られた。
講演の際には、北大西洋のSSTトレンドの要因や、数値実験に基づく物理的なメカニズムの検証結果についても紹介する。