14:50 〜 15:10
[ACG44-05] 冬季大規模大気場への黒潮大蛇行の影響
★招待講演
キーワード:黒潮大蛇行、アリューシャン低気圧、10年規模変動、大気海洋相互作用
2014/15年にアリューシャン低気圧が強化し、約20年ぶりにレジームシフトが発生した可能性が指摘された(Sugimoto and Suga 2022)。この強化に伴う風強制の影響で、黒潮続流(KE)流路は2016年半ばに安定状態から不安定状態に遷移したが、2017年8月の黒潮大蛇行の開始に伴い安定状態に戻った。そして、2017年冬にアリューシャン低気圧も弱化に転じており、この要因として黒潮大蛇行の影響が予想される。
2017年8月に始まった黒潮大蛇行は持続期間が4年を超え、観測史上最長記録の更新が迫っている。本研究では、大蛇行に伴う海洋場が冬の大規模大気場に与える影響をデータ解析・数値実験から調べた。
まず、大気再解析データを用いて、1980年以降に発生した5回の大蛇行を対象に合成図解析を行った。その結果、黒潮大蛇行期に冬季北太平洋中央部から東部にかけて等価順圧構造で特徴付けられる高気圧性偏差が同定された。これはアリューシャン低気圧の弱化を表しており、2017/18年のレジームシフト状態の解消と矛盾しない。黒潮大蛇行期にはKE流路は安定状態にあることが報告されている(Qiu and Chen 2005, Sugimoto and Hanawa 2012)。そこで、続流北縁の海面水温前線に焦点を当てた。その結果、大蛇行期にKE北縁での海面水温前線が強化し、これに伴う大気下層の傾圧性強化に起因したtransition eddy活動度の変化が北太平洋中央部から東部にかけての高気圧性偏差形成の要因であることが定性的に示された。つづいて、大規模大気場への大蛇行の影響を定量的に評価するために気象庁非静力学大気モデルを用いて数値実験を実施した。その結果、大気再解析データで導いた解釈を支持する結論が得られた。本研究は、黒潮大蛇行、すなわち、KE流路の安定状態が大気場へのnegative feedback機構として作用する可能性を提示するものである。
2017年8月に始まった黒潮大蛇行は持続期間が4年を超え、観測史上最長記録の更新が迫っている。本研究では、大蛇行に伴う海洋場が冬の大規模大気場に与える影響をデータ解析・数値実験から調べた。
まず、大気再解析データを用いて、1980年以降に発生した5回の大蛇行を対象に合成図解析を行った。その結果、黒潮大蛇行期に冬季北太平洋中央部から東部にかけて等価順圧構造で特徴付けられる高気圧性偏差が同定された。これはアリューシャン低気圧の弱化を表しており、2017/18年のレジームシフト状態の解消と矛盾しない。黒潮大蛇行期にはKE流路は安定状態にあることが報告されている(Qiu and Chen 2005, Sugimoto and Hanawa 2012)。そこで、続流北縁の海面水温前線に焦点を当てた。その結果、大蛇行期にKE北縁での海面水温前線が強化し、これに伴う大気下層の傾圧性強化に起因したtransition eddy活動度の変化が北太平洋中央部から東部にかけての高気圧性偏差形成の要因であることが定性的に示された。つづいて、大規模大気場への大蛇行の影響を定量的に評価するために気象庁非静力学大気モデルを用いて数値実験を実施した。その結果、大気再解析データで導いた解釈を支持する結論が得られた。本研究は、黒潮大蛇行、すなわち、KE流路の安定状態が大気場へのnegative feedback機構として作用する可能性を提示するものである。