日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 陸域〜沿岸域における⽔・⼟砂動態

2022年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:山崎 大(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、浅野 友子(東京大学)、コンビーナ:有働 恵子(東北大学災害科学国際研究所)、座長:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、有働 恵子(東北大学災害科学国際研究所)

09:15 〜 09:30

[ACG45-02] 霞ヶ浦における鉛直混合に関連する輸送現象の観測

★招待講演

*増永 英治1、北村 立実2伊藤 幸彦3 (1.茨城大学、2.茨城県霞ケ浦環境科学センター、3.東京大学)

キーワード:混合、湖、溶存酸素、栄養塩

本研究は,夏季の霞ヶ浦における鉛直混合に関わる物質輸送過程について紹介する. ADCP,水温係留系,曳航式観測装置(YODA Profiler)及び微細構造観測装置(VMP-250)を用いて2020年と2021年夏季に観測を実施した.物理構造の計測に加え,採水サンプルから栄養塩濃度を計測した(窒素及びリン).日中の太陽光放射が成層を強めることで鉛直混合が抑制され湖底への酸素輸送が抑制される状態が発生していた.安定した成層下では渦拡散係数はO(10-6) m2 s-1程度と非常に低く,一方強風下ではO(10-3) m2 s-1程度の強い乱流が発生していた.風速は,午後 (12:00­-18:00)に強められる日周期の海風によって強められ鉛直混合を促進していた.Richardson数やMonin-Obukhov length scaleといった一般的な乱流パラメータを用いることで水柱の安定度や混合状態を説明することができることがわかった.湖底付近の溶存酸素(DO)が低くなると同時にリン濃度(TP,PO4P)の上昇が確認された.このことは,混合が抑制された状態で発生する貧酸素水塊が底泥からのリンの溶出を促していることを示唆している.一方窒素濃度は,底層の酸素濃度との関係性は確認されなかった.本研究の結果から,鉛直混合は霞ヶ浦における酸素や栄養塩の供給過程にとって非常に重要なプロセスであると言える.