09:45 〜 10:00
[ACG45-04] メコン河の土砂動態とデルタ海岸の侵食
★招待講演
キーワード:ダム、土砂不足、東南アジア、川砂採取、人間活動
東南アジアのメコン河は,全長4600 kmで6か国を流れ下る大河である.このメコン河では,過去30年間に水力発電・灌漑を目的とした河川ダムの構築や川砂採取が加速し,土砂や河川水の動態に大きな影響を及ぼしていると考えられるが,システムの規模が大きいことから実態の把握は不十分である.最下流のメコンデルタ(三角州)では海岸侵食が進行し,さらにデルタ面積が2005年以降に縮小している.これは年間5 km2もの速度で拡大してきたメコンデルタでは異常事態であり,沿岸への土砂供給量減少の証拠とも考えられるが,海岸侵食の直接的な要因は不明である.ここでは,地質学的手法に基づく長期的(数十〜千年スケール)な海岸線変化の観点から,メコンデルタの海岸侵食についての見解を述べる.
メコンデルタの海岸では河川,潮汐,波浪のプロセスが場所によって様々な割合で堆積物運搬に寄与している.分岐流路は潮汐-河川遷移帯であり,河口近傍の海岸は潮位変動の影響を受けた波浪と河川との相互作用,デルタ南西部のカマウ半島では波浪と潮流による南西への泥の沿岸漂流が卓越する.さらに,雨季に多量の土砂が河口に流出し乾季に北東の強い季節風が波向を変える,モンスーンの影響が顕著である.海岸侵食はこの複雑な海岸システムの中で,不均一に発生している.砂の多い河口域では漂砂上手での侵食と下手での堆積とがつり合う一方で,カマウ半島の泥質海岸は大幅に侵食されており,デルタ全体の合計として面積の縮小が認められる.
河口域では,河口砂州が海岸の数km沖合に成長し,それを核として海岸線が不連続に移動する現象が200年から600年の周期で繰り返されてきた.こうしたシステムでは,土砂収支の見積りには浅海底の深浅測量が必要である.最近20年間では,河口砂州が年間数百mの速度で陸側に後退しており,河口域での土砂不足は見た目よりもはるかに深刻である可能性が高い.一方,カマウ半島の大幅な侵食は過去100年間にわたって続いており,近年のダムや川砂採取ではなく土地利用の変化や三角州での運河網の構築などの影響が考えられる.メコン河上流域では巨大ダムが2012年に完成し,また川砂採取も拡大しており,沿岸での土砂不足が今後より深刻になることが予測される.メコン河の河川水と土砂の動態は社会経済の問題でもあり,抜本的で定量的なモニタリングの充実とともに,リモートセンシングや数値モデリングなどの多角的なアプローチにより理解していくことが必要である.
メコンデルタの海岸では河川,潮汐,波浪のプロセスが場所によって様々な割合で堆積物運搬に寄与している.分岐流路は潮汐-河川遷移帯であり,河口近傍の海岸は潮位変動の影響を受けた波浪と河川との相互作用,デルタ南西部のカマウ半島では波浪と潮流による南西への泥の沿岸漂流が卓越する.さらに,雨季に多量の土砂が河口に流出し乾季に北東の強い季節風が波向を変える,モンスーンの影響が顕著である.海岸侵食はこの複雑な海岸システムの中で,不均一に発生している.砂の多い河口域では漂砂上手での侵食と下手での堆積とがつり合う一方で,カマウ半島の泥質海岸は大幅に侵食されており,デルタ全体の合計として面積の縮小が認められる.
河口域では,河口砂州が海岸の数km沖合に成長し,それを核として海岸線が不連続に移動する現象が200年から600年の周期で繰り返されてきた.こうしたシステムでは,土砂収支の見積りには浅海底の深浅測量が必要である.最近20年間では,河口砂州が年間数百mの速度で陸側に後退しており,河口域での土砂不足は見た目よりもはるかに深刻である可能性が高い.一方,カマウ半島の大幅な侵食は過去100年間にわたって続いており,近年のダムや川砂採取ではなく土地利用の変化や三角州での運河網の構築などの影響が考えられる.メコン河上流域では巨大ダムが2012年に完成し,また川砂採取も拡大しており,沿岸での土砂不足が今後より深刻になることが予測される.メコン河の河川水と土砂の動態は社会経済の問題でもあり,抜本的で定量的なモニタリングの充実とともに,リモートセンシングや数値モデリングなどの多角的なアプローチにより理解していくことが必要である.