日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG46] 海洋表層-大気間の生物地球化学

2022年5月26日(木) 15:30 〜 17:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:亀山 宗彦(北海道大学)、コンビーナ:岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)、コンビーナ:小杉 如央(気象研究所)、座長:岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)

16:15 〜 16:30

[ACG46-04] 冬季~春季の西部北太平洋域におけるTEPの時空間分布と生物学的プロセス

*川名 華織1松本 和彦1野口 真希1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:生物起源有機態粒子、生物ポンプ、植物プランクトン群集組成

Transparent exopolymer particles (TEP)は、海洋生物活動に由来する多糖類ポリマーからなる有機態の一次生成粒子であり、海洋環境においては豊富に存在するゲル状粒子の一種である。TEPは粒子の凝集を促進することから、海洋の炭素循環の効率に重要な役割を担っていると推測されているが、船舶による外洋域の観測は海域や季節が限定的であり、海盆スケールおよび鉛直分布などTEPの空間分布を把握しきれていない。一方、海洋生物起源の有機物の一部がエアロゾルとして大気中へと放出されることにより、雲粒形成(雲凝結核・氷晶核)に作用すると考えられているが、これら一連のプロセスは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、冬季~春季に西部北太平洋域において海水を採取し、TEPの水平分布・鉛直分布をもとに、広域分布の形成要因や生物活動との応答性について考察した。
海洋地球研究船「みらい」により2021年2~3月に実施されたMR21-01航海において、西部北太平洋亜寒帯海域の観測点K2(47N,160E)およびKNOT(44N,155E)、亜熱帯域の観測点KEO(32N,142E)およびKEOS(25N,145E)を含む15観測点において、表層から5000mまで複数層採水し、試料とした。海洋表層におけるTEP濃度は、KNOTで14.3 µg XGeq L-1、KEOSおよびKEOで8.7±1.4 µg XGeq L-1であり、南北緯度方向の濃度勾配を成し、Chl-a濃度の高低ともよく同期していた。TEP濃度の鉛直分布は、KNOT、K2は共に表層~ 5000m までほぼ一様の濃度を示し、表層と下層でのTEP濃度の変化はごく小さかった。一方、KEOSとKEOでは、50m以深から中深層に向かって低濃度となる傾向を示した。Chl-aのサイズ分画と植物プランクトン群集組成解析を実施したところ、KNOTおよびK2では直径10μm以上の粗大粒子が高割合を占め、珪藻類が卓越していた。一方、KEOSおよびKEOでは直径1μm以下の微小粒子が高割合を占め、シアノバクテリア(Prochlorococcus) が卓越していた。
発表では、中部太平洋域(6S, 161W)~西部北太平洋亜熱帯海域(32N, 144E)における春季の観測データを含め、TEPの空間分布や季節変動性について比較、議論する予定である。