13:45 〜 14:00
[AHW24-13] 地下水が狩野川水系へ及ぼすインパクト
★招待講演
キーワード:狩野川、地下水、微生物DNA、ドローン、植物プランクトン
1. 河川への地下水直接湧出箇所の探査
研究対象の狩野川は,伊豆半島中央部の年間降水量が2000 mmを超える天城山系を源流とし,幹川流路延長が46 kmの一級河川である。最上流部の天城山系から湧水が流れ込む他, 下流部では, 富士山麓で涵養された日量約100万トンの湧水が流れを作る柿田川や,富士山麓から三島溶岩流に沿って南下する黄瀬川からも少なくない量の湧水の流れこみが認められている。さらに狩野川では,山地に沿って川が流れる中流域においても周辺から湧水が直接流れ込む可能性が推察される。その湧出箇所をドローンによる水温の空中観測から見つけ出す手法に成功したので紹介する。
観測対象の平野部に湧出する地下水の温度は年間を通じてほぼ15℃である。一方、狩野川では冬季、12月から3月にかけて河川の表層水温が15℃を下回るため、表層に湧水の湧出を確認することができる。空中から河川水より高温度が検出された箇所で実際に現場観測を行い、また水の分析を行った結果、ドローンを用いた観測から湧水の湧出箇所や広がりを推定することが確認された。分析では湧水候補地点と河川流心付近の水に含まれる微生物DNA解析も行い、前者にはOD1 に類縁の細菌が優占していたのに対し、後者、河川水中にはその割合が極めて小さく、水圏や土壌に見られるクローンが優占することがわかり、現場観測の結果を支持した。
2.地下水の狩野川や沿岸域生態系への影響
湧水は湧出量によってその影響の大小は異なるが,地下を経た水が多量に含むイオンが河川環境に影響を与える可能性がある。その効果を明らかにする目的で、まず湧水河川の柿田川の水に鉄とマンガンを加えたところ、植物プランクトンの生産力は上昇したことから、柿田川湧水にはこれらの元素が生産力の制限因子になっていると考えられた。次に、柿田川の水を、柿田川が合流する前の狩野川の水に加えたところ、植物プランクトンの生産力は上昇した。このことから狩野川の水には鉄やマンガンの欠乏はないと考えられるが、一方、柿田川の水には植物プランクトンの増殖を促す栄養塩が含まれることが示唆された。これは柿田川が狩野川本川に合流した後の狩野川の状態を示している。本研究は国土交通省 河川砂防技術開発制度の支援を受けている。
研究対象の狩野川は,伊豆半島中央部の年間降水量が2000 mmを超える天城山系を源流とし,幹川流路延長が46 kmの一級河川である。最上流部の天城山系から湧水が流れ込む他, 下流部では, 富士山麓で涵養された日量約100万トンの湧水が流れを作る柿田川や,富士山麓から三島溶岩流に沿って南下する黄瀬川からも少なくない量の湧水の流れこみが認められている。さらに狩野川では,山地に沿って川が流れる中流域においても周辺から湧水が直接流れ込む可能性が推察される。その湧出箇所をドローンによる水温の空中観測から見つけ出す手法に成功したので紹介する。
観測対象の平野部に湧出する地下水の温度は年間を通じてほぼ15℃である。一方、狩野川では冬季、12月から3月にかけて河川の表層水温が15℃を下回るため、表層に湧水の湧出を確認することができる。空中から河川水より高温度が検出された箇所で実際に現場観測を行い、また水の分析を行った結果、ドローンを用いた観測から湧水の湧出箇所や広がりを推定することが確認された。分析では湧水候補地点と河川流心付近の水に含まれる微生物DNA解析も行い、前者にはOD1 に類縁の細菌が優占していたのに対し、後者、河川水中にはその割合が極めて小さく、水圏や土壌に見られるクローンが優占することがわかり、現場観測の結果を支持した。
2.地下水の狩野川や沿岸域生態系への影響
湧水は湧出量によってその影響の大小は異なるが,地下を経た水が多量に含むイオンが河川環境に影響を与える可能性がある。その効果を明らかにする目的で、まず湧水河川の柿田川の水に鉄とマンガンを加えたところ、植物プランクトンの生産力は上昇したことから、柿田川湧水にはこれらの元素が生産力の制限因子になっていると考えられた。次に、柿田川の水を、柿田川が合流する前の狩野川の水に加えたところ、植物プランクトンの生産力は上昇した。このことから狩野川の水には鉄やマンガンの欠乏はないと考えられるが、一方、柿田川の水には植物プランクトンの増殖を促す栄養塩が含まれることが示唆された。これは柿田川が狩野川本川に合流した後の狩野川の状態を示している。本研究は国土交通省 河川砂防技術開発制度の支援を受けている。