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[AHW27-P05] 都市域臨海部における地下温度の長期変化-東京港埋立地お台場地区で観測された地下温暖化
キーワード:地下温度、地下水流動、都市域臨海部、東京港埋立地、地下温暖化
首都圏を擁する関東平野では,地下環境の温暖化が都心部だけでなく郊外においても広く進行している(宮越ほか,2019など)。筆者らは,2000年以降,首都圏内の主に自治体が所管する地盤沈下・地下水位観測井において地下温度プロファイルを繰り返し測定するとともに,東京都・埼玉県内の観測井において地下温度モニタリング(2009年以降)を実施している。この結果,多くの地点において,地下浅部を中心に継続的に地下温度が上昇している。地下温度分布とその経年的な変化には明瞭な地域差が認められ,都心部では郊外よりも相対的に高温を示し,かつ温度上昇率が大きい。首都圏の地下温暖化は,各地における土地利用の変化,特に都市化に伴う地表面や地下浅部の温度上昇と,地下水利用を反映した広域スケールでの地下水流動,さらに地球温暖化の複合的な影響によって進行していると考えられる(宮越ほか,2019など)。このような中にあって,東京湾の最奥部に位置する東京港は,東京湾を埋め立て・造成した陸地から構成されることに加え,地下水利用が厳しく制限されていることから,地表面からの熱の影響を評価するのに適していると考えられる。本発表では,東京港13号埋立地お台場地区の観測井における長期観測データに認められた地下温度の長期上昇トレンドと,推定される形成要因を報告する。
地下温度プロファイルには,深度18m付近に極大値が認められ,それ以深は孔底深度60mまで温度が低下し孔底温度が極小値となる特異な深度-温度変化を示す。また,地下浅部に見られる季節変動を除き,2009年以降,全観測深度で継続した温度上昇が観測された。ただし,各深度の温度上昇率は一様ではなく,40m以浅で大きい傾向がある。特に,深度18m付近の極大温度の温度上昇率は大きく,2009~2021年で1.5℃超上昇していた。
極大温度が確認された深度18m付近は,地質層序と対比すると,沖積層内の砂層と下位に厚く堆積する粘性土層の境界付近に相当しており,地下温暖化は主に沖積層内の粘性土層内において顕著に確認された。これら粘性土層中では,地下水流動が緩慢で熱移流が小さいと考えられることから,温暖化は熱伝導によって生じており,熱源として地下構造物からの排熱が考えられた。一方,深度40m付近の東京層内の砂礫層の地下温度変化については,周辺地区における大規模な土木工事の影響が示唆された。本研究の結果は,都市域における地下温暖化は,地表面の被覆や地球温暖化に伴う地表面温度上昇の影響だけでなく,地下構造物の建設などの地下開発の影響を大きく受け得ることを示すものである。
地下温度プロファイルには,深度18m付近に極大値が認められ,それ以深は孔底深度60mまで温度が低下し孔底温度が極小値となる特異な深度-温度変化を示す。また,地下浅部に見られる季節変動を除き,2009年以降,全観測深度で継続した温度上昇が観測された。ただし,各深度の温度上昇率は一様ではなく,40m以浅で大きい傾向がある。特に,深度18m付近の極大温度の温度上昇率は大きく,2009~2021年で1.5℃超上昇していた。
極大温度が確認された深度18m付近は,地質層序と対比すると,沖積層内の砂層と下位に厚く堆積する粘性土層の境界付近に相当しており,地下温暖化は主に沖積層内の粘性土層内において顕著に確認された。これら粘性土層中では,地下水流動が緩慢で熱移流が小さいと考えられることから,温暖化は熱伝導によって生じており,熱源として地下構造物からの排熱が考えられた。一方,深度40m付近の東京層内の砂礫層の地下温度変化については,周辺地区における大規模な土木工事の影響が示唆された。本研究の結果は,都市域における地下温暖化は,地表面の被覆や地球温暖化に伴う地表面温度上昇の影響だけでなく,地下構造物の建設などの地下開発の影響を大きく受け得ることを示すものである。