日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS16] Frontiers of Ocean Mixing Research

2022年6月1日(水) 09:00 〜 11:00 オンラインポスターZoom会場 (8) (Ch.08)

コンビーナ:日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:Lamb Kevin G(University of Waterloo)、伊地知 敬(The University of Tokyo)、座長:伊地知 敬(The University of Tokyo)

09:00 〜 11:00

[AOS16-P05] モーター振動のない場合の微細構造センサーを搭載した深海フロートを用いた乱流観測の有用性

*翟 爍1安田 一郎1、後藤 恭敬2、山木 謙3 (1.東京大学大気海洋研究所、2.気象庁、3.株式会社鶴見精機)

キーワード:乱流、深海フロート、振動

深海乱流をフロートによって自動観測することは海洋循環・熱物質循環を定量化する上で重要な課題である。本研究では、RSI社の微細速度シア及び微細水温センサを搭載した鶴見精機のDeepNinjaフロートによる観測を2017年12月から2018年4月において行い、フロートによる乱流観測の有効性について検討した。フロートは上昇速度が0.2m/sを下回るとモーターが作動して浮力調節を行うように設定されており、モータ作動による振動は明らかに流速シアデータに悪影響を及ぼしていた。微細水温センサデータについてもモータ振動による影響が見られたため、まず最初のステップとして、モータ振動が無い場合を加速度センサデータから抽出し、微細シアセンサと微細水温センサから得られる乱流エネルギー散逸率を比較した。微細高速水温センサからは、水温鉛直勾配スペクトルにKraichnan理論スペクトルを当てはめ、バチェラー波数を求めて、エネルギー散逸率を見積もった。上昇速度0.2m/sという低速での水温センサによる測定では、時間応答補正は必要無いことが想定されたが、水温勾配周波数スペクトルに時定数補正をτ0W-0.320=32ms)(Gregg & Meager 1986)とした場合にのみ、シアと水温から求めた散逸率は整合的となった。また、シアセンサからの散逸率の測定下限は10-10W/kgと見積もられ、深海の弱い乱流の測定には必ずしも適切では無いと考えられた。1日ほど時間が異なるが、同地点でのVMP6000による精密観測においても1000m以深の深海では10-10W/kgを下回る散逸率が観測され、水温計観測と10-11W/kgまでの範囲で整合していたことから、深海の弱乱流域では、微細高速水温計による観測が有効であることが示唆された。