日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS17] 海洋物理学一般

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:土井 威志(JAMSTEC)、コンビーナ:岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、座長:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

13:45 〜 14:00

[AOS17-01] 気象研究所共用海洋モデル「MRI.COM」の開発状況 (2): v5.0 の公開

*坂本 圭1中野 英之1豊田 隆寛1浦川 昇吾1川上 雄真1辻野 博之1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:海洋大循環モデル、モデル開発、現業モデル

気象研究所共用海洋モデルMRI.COMは、気象研究所で開発されている海洋大循環モデルである。本モデルは2000年頃に開発が始まり、気象研地球システムモデルや気象庁現業システムをはじめ幅広い目的で使用されてきた。2015年秋季海洋学会で鉛直座標系を刷新した v4.0 を発表してからも、2016年にv4.2, 2017年にv4.4, 2019年にv4.6, 2021年にv5.0と、継続的な開発を受けて安定版を逐次公開してきた。本発表では、v4.0以降に行われたモデル改善と、現在の開発状況を紹介する。

モデル改善では、まず、Leapfrog Matsuno method から Leapfrog Adams Moulton method への時間積分スキームの刷新が挙げられる。この変更により時間ステップ間隔を延長でき、最大40%の高速化を実現した。高速化は重要課題とされ、OpenMPの本格導入、MPI-IO の利用、ネスティング通信軽量化なども行った。安定性向上にも多くの工夫がなされ、これらの開発成果は2020年からの「日本沿岸海況監視予測システム」現業運用に活かされている。もう1つの重要課題としては、大気モデル及び海氷モデルとの結合の改善がある。気象庁現業大気モデルと整合するバルク式の導入や、海氷プロセスの高度化が行われている。加えて、等密度面解析、粒子追跡、netCDF出力など、モデリング研究のための解析機能も強化された。他にも、多くの物理スキームの導入や、精度向上のための調整など多数の改善がある。現在はこれらの改善をまとめて、マニュアルの更新作業を行っているところである。

モデルそのものに加えて、開発体制も進展した。我々、開発グループとしてモデル開発管理手法を確立するとともに(坂本他, 2019, 海の研究)、外部webサイト「github」を利用した外部提供を開始した(2019年秋季海洋学会)。さらに、モデル開発における気象研究所内外との協力関係の進展を強調したい。気象庁内の海洋データ同化グループ、地球システムモデル開発グループ、気象庁現業モデル開発陣と定期的にコミュニケーションを行い、プロジェクト管理ツールを用いて直接にフィードバックを得る体制を構築した。庁外では、JAMSTECグループとの協力により気候変動予測のためのモデル実験を、北大・筑波大との共同研究で港湾スケール・モデルの開発も行っている。さらには東大・JAMSTECのOGCM開発グループとの海洋モデル相互比較プロジェクトも始まった。これからも、我々は多様な海洋モデリング研究を MRI.COM の開発に集約する努力を続けていく。