日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS22] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (7) (Ch.07)

コンビーナ:高橋 大介(東海大学)、コンビーナ:古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、コンビーナ:森本 昭彦(愛媛大学)、座長:高橋 大介(東海大学)、古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、森本 昭彦(愛媛大学)

11:00 〜 13:00

[AOS22-P01] 豪雨時における閉鎖性海域への淡水流入量の推定:石川県七尾湾におけるケーススタディ

*南部 正裕1、奥野 充一2、仙北屋 圭2、大慶 則之3小林 志保4 (1.京都大学 農学研究科、2.石川県水産総合センター、3.能登の森里海研究会、4.京都大学 フィールド科学教育研究センター)

キーワード:小河川、沿岸海域、七尾湾、気候変動、集中豪雨

気候変動下では極端な降水が増加することが多くの研究で示唆されている。例えば「地球温暖化予測情報 第9巻」(気象庁 2017)では、RCP8.5シナリオ下で日降水量100mm以上の大雨や1時間降水量50mm以上の短時間強雨が増加することが報告されている。
こうした大量の降水は、短時間で大量の淡水を沿岸域に供給し、河川流量を短期的に増加させ、海洋環境の低塩分化をもたらす。極端に低塩分な環境は、二枚貝などをはじめとして多くの沿岸域の海洋生物において、成長阻害や致死的影響を与えることが報告されている。このことから極端な降水が生物多様性の高い沿岸海域や漁場に与える影響を定量化することが必要である。
増加する極端な降水が沿岸海域に及ぼす影響を評価するには、降水により海域に流入する淡水量の推定が必要である。しかし、二級河川以下の中小河川では河川流量のデータが測定または公表されていない場合も多く、主要な淡水流入源が中小河川である沿岸海域では淡水流入量の推定が難しくなっている。
そこで本研究では、主要な淡水流入源が中小河川である沿岸海域において、現地観測により河川から海域への淡水流入量を求め、集水域における降水量との関係を求めることを目的とした。
本研究では集水域に二級河川以下の小河川しかない石川県七尾湾をモデル海域として取り上げた。七尾湾は石川県能登半島に位置する内湾で、中央にある能登島によって北湾、南湾、西湾の3つの海域にわけられている。本研究では、そのうち平均水深が6.3mと最も浅く、中小河川からの淡水が多く流入する西湾に着目した。
まず、七尾湾西湾に流入する主な中小河川である熊木川、日用川、笠師川、塩津川、三引川、二宮川の6つの河川について以下の観測を行った。第一に、集水域が大きい河川の1つである熊木川について2021年7~8月の2ヶ月間に渡り水位と流速を観測し、連続的な流量を算出した。第二に、6つの河川全てにおいて、2021年7~8月の2ヶ月間のうち計12回にわたり水位と流速を観測し、単発的な河川流量を算出した。
次に熊木川について、1kmメッシュの解析雨量から集水域にあたる領域の降水量を抽出し、連続流量との関係を求め、モデル化を行った。また、熊木川以外の河川については、熊木川で作成したモデルを適用し、各河川の集水域における降水量の入力と、各河川の単発的な流量観測結果でパラメーターを調整した。
7月上旬と8月中旬に1時間あたり15mmを超える強雨または1日あたり50mmを超える豪雨があり、それに対応して熊木川やその他の河川の流量も変動していた。また、西湾に流入する6つの河川の降水期間中における流量変動はそれぞれ大きく異なっていた。近接した河川であっても、沿岸海域への淡水供給量の寄与率や時系列変動は大きく異なり,豪雨の局所性が反映されていると考えられた。