[A-OS22] 沿岸域の海洋循環と物質循環

[AOS22-P02] 豪雨に伴う淡水流入が半閉鎖性海域の貧酸素化に及ぼす物理的影響

*小林 志保¹、中田 聡²、仙北屋 圭³、奥野 充一³、南部 正裕¹ (1.京都大学、2.国立環境研究所、3.石川県水産総合センター　)

キーワード：集中豪雨、貧酸素水塊、半閉鎖性海域、沿岸海域モデル、粒子追跡

気候変動により集中豪雨の規模や頻度が拡大することが予測されている．豪雨の増加は貧酸素化をはじめとする沿岸海域の環境に大きな影響を及ぼす可能性がある。本研究では，Green関数と海岸沿いの実測塩分を用いて流域水収支モデルの係数を逆推定することにより豪雨時の淡水供給量を求め，海域の流動・物理構造と海域下層への酸素供給量の変化を調べることを目的とした．
七尾湾全体に流動モデル（FVCOM）を適用し，現地観測結果を用いてパラメータを調整した．このモデルを用いて現地観測によって貧酸素化が確認された前後の期間の流動・物理構造を再現し，貧酸素領域に粒子を置いてその追跡を行なった．その結果と，河川水流入，風，潮汐およびそれらの相互作用の影響を除去した計算結果とを比較し，各要因の寄与を調べた．
湾奥上層から湾口に向けて低塩分水が流出し，湾口から湾奥下層に酸素を多く含む高塩分水が流入する鉛直循環流が発達している内湾においては，河川水の流入は内湾の海水交換や貧酸素化領域への酸素供給を促進することが多いが，本研究の対象海域では豪雨時の河川水流入単独での効果は明瞭ではなかった．一方，風と河川水流入の相互作用による海水交換の促進は効果が大きく，貧酸素化領域への酸素供給に大きな影響を及ぼすと考えられた．