日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS22] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (7) (Ch.07)

コンビーナ:高橋 大介(東海大学)、コンビーナ:古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、コンビーナ:森本 昭彦(愛媛大学)、座長:高橋 大介(東海大学)、古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、森本 昭彦(愛媛大学)

11:00 〜 13:00

[AOS22-P04] 東京湾表層堆積物における間隙水中のヨウ素・メタン分布

*尾張 聡子1、鈴木 渚1鶴 哲郎1山中 寿朗1 (1.東京海洋大学)

キーワード:東京湾、サプロペル、間隙水、全有機炭素、ヨウ素、メタン

ヨウ素は強い生物親和性を持つことから,海水中の植物プランクトン等の有機物に取り込まれる(Price and Calvert, 1977; Elderfield and Truesdale, 1980).植物プランクトンの死骸は,他の堆積物粒子と共に海底に堆積する.有機物は埋没過程で地熱や微生物によって分解されることでメタンを生じ,有機物に吸着していたヨウ素も同時に間隙水中に放出される (Wallmann et al., 2006).
東京湾は複数の河川を通じて,生活・工場排水が多量に流れ込んでおり,排水中の栄養塩によって海水が富栄養化し,植物プランクトンが大増殖する.これらの植物プランクトンの死骸が有機物として海底に堆積することで,東京湾は,生物由来有機物が過剰に供給される環境として特徴づけられる.本研究は,有機物負荷の高い東京湾において,有機泥が発達する表層堆積物を対象とし,有機物との親和性の高いヨウ素やメタンが間隙水中でどのような分布を示すか明らかにすることを目的とした.東京海洋大学の練習船ひよどりで,東京湾奥部の58地点においてエクマンバージ採泥器を用いて表層堆積物の採取をおこなった.
堆積物中の全有機炭素量は沿岸域で約0.1~3 wt.%,湾の中央部では約3~5 wt.%で,間隙水中のヨウ素濃度は沿岸域で約0.2~3 µM,湾の中央部では約3~5 µMであった.全有機炭素とヨウ素の濃度分布は,沿岸から湾の中央部にかけて高くなる傾向がみられ,堆積物中の有機物量が多いほど間隙水中のヨウ素濃度も高いことが明らかとなった.一方で,間隙水中のメタン濃度の分布は全有機炭素やヨウ素の濃度分布とは異なり,湾の東岸側で0~6 µM程度と低く,北西沿岸域(浦安沖~江東区沖)では20 µM以上と高く,特に河口や埋め立て地などに近い採泥点ではメタン濃度が著しく高かった.全採泥点における間隙水中の最大ヨウ素濃度は5 µM,メタン濃度は103 µMと,海水と接する海底のごく表層において,それぞれ海水濃度の約10倍,1000倍を示した.