日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、コンビーナ:加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、コンビーナ:中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、座長:冨松 由希(九州大学理学研究院地球惑星科学部門)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

14:30 〜 14:45

[BCG05-16] 三畳紀-ジュラ紀境界大量絶滅におけるSi同位体比変動

Bole Maximilien1,4,5、*池田 昌之1牛久保 孝行2堀 利栄3、Baumgartner Peter5、中井 佑樹4 (1.東京大学、2.高知大学、3.愛媛大学、4.静岡大学、5.ローザンヌ大学)

キーワード:三畳紀-ジュラ紀境界大量絶滅、Si同位体

三畳紀末の大量絶滅イベントは、顕生代における五大絶滅「ビッグ5」の1つに数えられるが、地球規模での環境変化の時期や性質は、まだ解明されていない。本論文では、犬山地域勝山セクションにおける遠洋深海性層状チャートの三畳紀末放散虫化石の群集転換期において、二次イオン質量分析法SIMSを用いたmmスケールでの高分解能の放散虫のδ30Siプロファイルを報告する。三畳紀からジュラ紀にかけての放散虫のδ30Siは-0.6±0.5‰から2.6±0.3‰で、現代試料を含む三畳紀から新生代の放散虫δ30Siデータと整合的である。また、チャートのSiの90%が放散虫起源であることから、放散虫のδ30Siに対する砕屑物のコンタミや続成作用の影響は無視できる程度であることが示唆された。cmスケールの2 ‰に及ぶδ30Siの変動は、全体としてシリカ含有量の変化に関連し、放散虫の生産性を反映している可能性がある。さらに、三畳紀末の放散虫ターンオーバー区間とその上部に、負のδ30Si異常を検出した。最初のSIEはヘマタイトが減少した紫チャート層の基底から10 mmの範囲で検出され、おそらく中央大西洋マグマ地域(CAMP)における初期の大規模火山活動と、それに伴う深海の酸性化、および三畳紀末の放散虫ターンオーバーの始まりに関連していると思われる。最初の負のSIEから約10 mm上方の2 ‰までの正のSIEは生物源シリカ生産性の急激な回復を記録していると考えられ,これは放散虫ターンオーバーの期間内にいくつかのジュラ紀型の放散虫群集が最初に出現したことと関連している可能性がある。また、最下層のダスキーレッドチャート層でも、示唆的なSIE 2 のデータを検出した。これらの負の SIE は約 1 mm 間隔で発生しており、三畳紀末の放散虫絶滅時期において千年、あるいはそれより短いスケールの急激な環境擾乱が発生したことを示唆している。