日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-GM 地下圏微生物学

[B-GM02] 岩石生命相互作用とその応用

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、コンビーナ:須田 好(産業技術総合研究所)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、須田 好(産業技術総合研究所)

14:00 〜 14:15

[BGM02-02] 炭酸カルシウム1/2水和物の溶解度測定:アルカリ塩湖水質予測への示唆

*酢山 真衣1福士 圭介2北島 卓磨1 (1.金沢大学、2.環日本海域環境研究センター)


キーワード:炭酸カルシウム1/2水和物、溶解度、イオン活量積、アルカリ湖

炭酸カルシウムは無水炭酸カルシウムのカルサイト、アラゴナイト、バテライト、含水炭酸カルシウムのモノハイドロカルサイト(MHC, CaCO₃・H₂O)、イカイト(CaCO₃・6H₂O)、非晶質炭酸カルシウム(ACC)の6 種類に分類される。これらに加え、近年、Zou et al. (2019)にて炭酸カルシウム1/2 水和物 (Calcium carbonate hemi hydrate: CCHH, CaCO₃・1/2H₂O)が合成された。CCHHは未だ天然環境では未発見であるが、その存在可能性を検討し、役割を予測することは地球の炭素循環への理解に貢献すると考えらえる。そこで我々は天然環境を模した条件でCCHHの生成を試み、化学的性質を調査することでCCHHの存在可能性を検討する。Zou et al. (2019)によるとCCHHは高濃度のCa-Mg-CO₃溶液から生成する。一方、我々の事前研究からはCCHHはMgが溶液に存在しなくてもCa²⁺濃度とCO₃²⁻濃度が共に高い条件で普遍的に生成することが確認された(Suyama et al., JpGU2021)。そのためCCHHは自然環境においても成分濃度の高い水環境に存在すると考えられる。自然界におけるCCHHの存在可能性を検討する上で、水環境とCCHHの関係を比較するための指標として「溶解度」がある。溶解度とは溶質が一定の量の溶媒に溶ける限界量のことをいい、溶けやすさの指標である。物質に固有の溶解度積と天然環境のイオン活量積を比較することで、ある水質環境下における制御物質を検討することができる。Fukushi and Matsumiya (2018)は大陸内部のアルカリ湖におけるカルシウム炭酸塩に関するイオン活量積をレビューし、その水質はMHCの溶解・沈殿反応により制御されていることを明らかにした。一方、彼らの示したアルカリ湖のイオン活量積の下限はMHCの溶解度と確かに一致しているが、イオン活量積の上限にはMHCよりわずかに溶解度の高いもう一系列のデータ群が確認できる。それらは報告されるどのカルシウム炭酸塩鉱物の溶解度とも一致しない。そこで我々は、アルカリ湖のイオン活量積はCCHHの溶解度積により制御されている可能性を提示する。本研究はこの仮説を検証するために、CCHHの溶解度を実験的に求めた。その結果、CCHHの溶解度は大陸内部アルカリ塩湖で認められるカルシウム炭酸塩に関するイオン活量積の上限と一致することを明らかにした。