日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-GM 地下圏微生物学

[B-GM02] 岩石生命相互作用とその応用

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、コンビーナ:須田 好(産業技術総合研究所)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、須田 好(産業技術総合研究所)

14:35 〜 14:50

[BGM02-04] 幌延地圏環境研究所の褐炭バイオメタン化プロジェクト

*玉村 修司1村上 拓馬1、木山 保1、上野 晃生1、玉澤 聡1、猪股 英紀1、吉田 邦彦2、山口 眞司2、酒井 智生2、五十嵐 敏文1 (1.公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 幌延地圏環境研究所、2.三菱マテリアル株式会社)

キーワード:褐炭、メタン、メタン生成アーキア、炭層メタン、過酸化水素、有機酸

炭層中のメタン生成アーキアによるメタン生成を人為的に促し,炭層メタンの生産量を増産させる試み(MECBM: microbially enhanced coalbed methane)が近年活発になされている。効率的なMECBMの適用には,石炭の可溶化による微生物利用効率の向上が必要とされる。これまで界面活性剤,酸化剤,酸,アルカリ,キレート剤等が石炭の可溶化剤として検討されてきた。このうち,酸化剤に分類される過酸化水素水は,褐炭を著しく可溶化して微生物に利用可能な低分子量有機酸を生成することが知られている。
当研究所(HRISE)では,過酸化水素水を褐炭の可溶化剤として,MECBMの生産を促進させる研究(SCG: Subsurface Cultivation and Gasification:バイオメタン鉱床造成/生産法)に取り組んでいる。2018年までの研究で,褐炭と過酸化水素水(H2O2)との反応は低温条件(10℃)でも時間をかければ常温(22℃)と同程度の濃度の低分子量有機酸を生成し得ること,反応溶液中の低分子量有機酸は褐炭中に生息するメタン生成アーキアによりメタンに変換されることなどを示してきた。
本SCGの現場試験に向け,2019年度は三菱マテリアル(株)との共同研究により同社が鉱業権を有する道北地方の天北小石露天坑において3本のボーリング孔を掘削した。2020年度はこれらの孔井にH2O2を注入し,低温(8℃)の褐炭層内におけるギ酸(> 25 mg L-1)等の低分子量有機酸の速やかな生成を確認することに成功した。また,溶存ガスの同位体比からH2O2注入後にバイオメタンが速やかに生成された可能性が示唆された。本可能性を検証するため,2021年度は比較的高濃度のギ酸溶液(1000 mg L-1)を直接褐炭層に注入し,バイオメタンが低温環境(8℃)でも数日以内に生成し得るかを検知することを目的とした。本発表ではこれら取り組みの概要を報告する。