日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-GM 地下圏微生物学

[B-GM02] 岩石生命相互作用とその応用

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、コンビーナ:須田 好(産業技術総合研究所)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

15:30 〜 15:50

[BGM02-06] 南アフリカ金鉱山地下3 kmの非天水超塩水環境下の太古代珪長質変成堆積岩と苦鉄質・超苦鉄質の貫入変質岩

★招待講演

*小笠原 宏1、DSeis Team (1.立命館大学理工学部)

キーワード:太古代変成堆積岩層、苦鉄質/超苦鉄質変質貫入岩、地下大深度、南アフリカ金鉱山、地震発生場

太古代以前、あるいは、大深度非天水環境下の、生命の痕跡や微生物生存条件を知ることは地球微生物学的に非常に重要である。その知見を得るために絶好の条件を有する、南アフリカ大深度金鉱山のあるスポットを紹介する。

南アフリカは,大深度の太古代の変成堆積岩中に金鉱脈を有し,非常に豊富な地質情報が得られ,地質探鉱はルーチン的に継続されており,湧水脈情報をタイムリーに入手できれば,汚染の少ない大深度地下水を入手することができる. Onstottと彼のチームはそれに注目し1996年から南ア金鉱山での地下水・地球微生物学研究を継続している(e.g., Onstott 2016 "Deep Life").

南アフリカの金とウランを産するMoab Khotsong鉱山の地下2.9kmから、M5.5地震の余震発生帯上縁部まで、総延長1.6kmのFull Core掘削が2017-2018年に行われた(Ogasawara et al., 2007 Afrirock, 2019 Deep Mining; ICDP 2019, "The Thrill to Drill").

掘削は、太古代珪長質変成堆積岩層(南東に約20度で傾斜)を進み,余震発生帯上縁部に達したとき,超苦鉄質の変質した厚さ数m未満ダイクと交差し,厚さ数m未満のコアロス帯(変質粘土化が進んだ断層物質が少量回収)が続いた.これら以外にも,Ventersdorp Large Igneous Province (2.7Ga)のSuper plume活動やそれよりも新しい数世代の関係のあるシル・ダイク系とも交差した.それらの1つは,余震発生帯の位置の超苦鉄質ダイクとほぼ平行だが余震は発生せず,代わりに,非天水・無酸素の超塩水脈が見つかった(Rusley et al. 2019 AGU).非生命起源の溶存有機物にも富む(Rusley et al. 2018 AGU; Nisson et al. AGU 2019; Onstott et al. 2019). この湧水は,Onstottらが1996年から南アのあちこちの金鉱山で採取したどの水よりも塩分濃度や成分が特異で,微生物学チームはこれから詳細の研究を始めようとしていた.ところが,微生物学チームリーダーT.C. Onstott が,2021年10月19日に惜しまれて亡くなり, DSeis チームはこのダイクをOnstott Dykeと命名し研究を継続することにした.

JpGU 2022では,DSeis計画に関する2021年度の活動の概観(Session M-GI32),余震発生帯をホストしている超苦鉄質ダイクとOnstott Dykeの物質科学的な違いに関する報告(S-CG46 Oman Ophiolite session)など,本講演とは別に6つの報告がある.これらで報告される,最近の成果も踏まえ,南アフリカ金鉱山の,特に,余震発生帯とOnstott Dykeを貫通した掘削孔と回収物(核心部は現在高知コアセンターに一次補完されている)の魅力をお話させていただきたい.