日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-GM 地下圏微生物学

[B-GM02] 岩石生命相互作用とその応用

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (28) (Ch.28)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、コンビーナ:須田 好(産業技術総合研究所)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

11:00 〜 13:00

[BGM02-P01] ブラジル・ラゴアベルメーリャにおける微生物炭酸塩の分解過程

*白石 史人1、半澤 勇作1、朝田 二郎2、Cury Leonardo3、Bahniuk Anelize3 (1.広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム、2.INPEXソリューションズ、3.パラナ連邦大学)

ブラジルのラゴアベルメーリャにおいて,微生物炭酸塩に対する人為的環境変化と蒸発濃縮の影響を理解するため,ラグーンに見られるストロマトライトと塩田に見られる微生物マットを調査した.ストロマトライトは主にMg方解石とあられ石からなり,ドロマイトを含む炭酸塩クラスト上に発達していた.多くのストロマトライトが水面まで侵食されていたが,いくつかの小さな緑色のストロマトライトは,水面下でドーム状形態を保持していた.しかしながら,ストロマトライト表面では岩内性シアノバクテリアが卓越しており,それらによって多数の微小穿孔が形成されていた.また,微生物の好気呼吸は暗条件で炭酸塩の溶解を引き起こしており,多細胞動物はストロマトライト内部を削り取って糞源ペレットを排出していた.これは,恐らく近年のラグーン水化学組成の変化によってストロマトライトの形成が停止し,それらが分解していることを示している.一方,炭酸塩と石膏を沈殿している塩田では,厚さ約3 cmの微生物マットが発達しており,石英・方解石・あられ石・石膏が含まれていた.本研究の調査時点ではCaCO3の沈殿は観測されず,従属栄養菌が光合成菌よりも優勢であるために,むしろ溶解が起こっていた.これは,塩田で蒸発が進行することでシアノバクテリアの個体数が低下し,その結果として光合成によるCaCO3沈殿が抑制されたためと考えられる.ラゴアベルメーリャにおけるこれら2つの微生物炭酸塩から得られた結果は,環境の変化が多細胞動物の進出のみならず,微生物代謝による炭酸塩の溶解を引き起こしうることを示唆している.