日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-GM 地下圏微生物学

[B-GM02] 岩石生命相互作用とその応用

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (28) (Ch.28)

コンビーナ:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、コンビーナ:須田 好(産業技術総合研究所)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

11:00 〜 13:00

[BGM02-P05] 高アルカリ条件における重金属の酸化物への吸着挙動

*武田 夏泉1福士 圭介2 (1.金沢大学、2.金沢大学環日本海域環境研究センター)

キーワード:表面錯体モデリング、重金属、脱離

表層土壌は人間活動に与える影響が大きく、例えば土壌中の重金属が水に溶けだして農作物に吸収されることで重金属が体内に取り込まれる可能性がある。一方重金属が溶出しなければ体内に重金属が取り込まれることもない。土壌を構成する鉱物から重金属が溶出する条件は元素ごとに異なる。一般的に溶液中の重金属濃度は鉱物への吸着・脱離反応に依存している。土壌鉱物に対する重金属の吸着挙動を理解することは、地表での重金属の移動性を明らかにするために重要である。重金属の吸着は鉱物表面の電荷に依存する。溶液中の鉱物表面は表面水酸基で覆われており、低いpH条件では表面が正に帯電するため陰イオンを吸着し、高いpH条件では表面が負に帯電するため陽イオンを吸着する性質がある。
 武田他(JPGU2020)では重金属による汚染が報告されている亀谷鉱山(富山県)の土壌を用いて様々な水質条件における土壌鉱物からの重金属脱離実験を行った。その結果、前述の一般的な重金属溶出挙動とはやや異なる傾向がみられた。低いpHでは重金属の溶出濃度が高く、pHの上昇に従って溶出濃度は減少した。しかしさらに高いpHでは陽イオン濃度が減少すると予想していたが、逆に溶出濃度が増加した。このような高いpHで重金属が再溶出する挙動は今までにほとんど報告されていない。
 そこで本研究では高アルカリ条件における重金属の鉱物への吸着挙動を明らかにすることを目的としている。本研究では合成ゲーサイトを用いてpH条件(3~12)における鉛の吸着挙動を調査した。
 実験の結果、低pHでは溶液中のPb濃度が高く、pHの上昇に伴って濃度は減少した。一方、pH10付近で溶液中の鉛濃度は最小値を取るものの、pH10~12では鉛濃度が増加し、最小値よりも約1桁高い値まで上昇した。なお、イオン強度による影響は見られなかった。
 酸性鉱山廃水の処理は一般的に消石灰の投入により中和処理されている。佐藤・田崎(2000)では石川県小松市にある尾小屋鉱山の処理後の廃水が流入する沈殿池の水質測定を行った。その結果、沈殿池の水はpHが6.3~12と中性からアルカリ性を示した。このpH範囲は本研究の結果で最も溶存濃度が低いpHだけでなく再溶出するpH範囲も含んでいる。このことから高いpHでの再溶出を見逃していたために重金属を溶液から除去できていない可能性があることが示唆された。