11:00 〜 13:00
[G01-P04] 大雨時の主体的な避難を促す水害防災教材の開発と評価
キーワード:防災、水害、教材、防災教育、教材開発
近年、局地的豪雨や台風など、人命に関わる大規模水害が頻発している。こうした情勢を踏まえ、防災教育においても水害や水害避難を扱った教材への需要が高まってきている。
大雨による災害は、地震による災害とは異なり、事前にある程度の予測が情報として提供される。事前に状況が予想できる状況は、一見対策が立てやすいようにも思われるものの、近年の大雨による災害は増加の一方である。大雨被害に対する防災,特に避難に関する意識変化や行動変容に関する研究は重要である。
本研究は、小学校及び中学校での総合的な学習の時間等の防災教育において、児童・生徒らが大雨の際に直面する避難のタイミングの難しさや避難時に発生するジレンマを体験し、水害時の避難の難しさを知ることで,それらへさらにどのように備えるかについて学ぶことのできる教材を開発・提案することを目的とする。
水害は地震災害とは異なり、気象予報などによって災害の規模が事前にある程度予測されている。その反面、情報を入手してから実際に水害に至るまでに時間がかかることで、避難行動を開始するタイミングが分かりにくいという問題がある。この教材は、こういった避難のタイミングの難しさや避難時に発生するジレンマを体験できる内容になっている。
作成した教材は紙芝居を用いたストーリー形式になっており、内容は対象の児童・生徒の年齢によって異なる。今回は小学校の高学年の児童を対象にしたものを紹介する。ストーリーは、主人公の児童(ケンくん)が祖母と二人きりで自宅にいる際に雨が降り始めるというところから始まる。この雨は、警戒レベル3相当の雨となり、その後警戒レベル4相当の雨へと変化していき、主人公を取り巻く状況も刻一刻と変化していく。この過程の様々なタイミングで、児童に「自分だったらこの時点で避難するのか」と逐次問いかけ、児童自身に考えてもらいながら進行していく。物語の中の主人公は、様々なジレンマによって最後まで避難しない.その物語の結末がどうなったのかは2パターン用意し、児童に提示する。1つ目は何事もなく翌朝を迎えるパターン、2つ目は2階まで浸水し、屋根の上で救助を待っているパターンである。この2パターンの結末を見せた後、時間を巻き戻してストーリーを最初から見せ,あらためて児童に避難するタイミングを考えてもらう。まとめとして、自分の置かれている状況を踏まえるということ、最悪の事態を想定するということ、1つの情報に縛られないということといった、避難を行動に移すにあたって重要なことをあげていく。上記の内容で小・中学校の授業1コマ(45分)分になっている。
中学生向けの教材では、発災場所が家族で訪れた川辺のキャンプ場となる。川の上流の状況を判断するなどの判断材料が増え、難易度が上がっている。
この教材は2021年度に入ってから3回、実際の小・中学校で使用している。1回目は7月19日の川越市立A中学校。2回目は11月1日に川越市立B小学校である。この時教材を使って授業をしたのはB小学校の教師である。そして3回目が11月8日に川越市立C小学校だ。今後についても教材の実施予定があり、新型コロナウイルスの影響で延期になってしまっているが、現時点では年度末に川越市立D小学校で実施する予定になっている。
紙芝居教材において、小学生を対象とした授業では45分間の授業で計5回、避難するか否かを問いかけた。避難する際には実際に問いかけるだけではなく、避難所と称した少し離れた場所に児童に移動をしてもらった。身体的な移動が伴うことで、実際の避難に思考を近付けるためである。集団で授業を受けているために、1人が立ち上がる(避難する)と、それにつられるようにして避難を選択する生徒も少なくなかった。しかし、それぞれの判断により、必ずしも避難することが正解になるわけではない。そのため、避難するか否かを児童に選択してもらった後には、何人かをランダムに指名し、理由を発言してもらった上で、敢えて全ての意見を肯定する。授業の最後にあらためて避難のタイミングを決めてもらう際には,避難のタイミングもその理由も変化している.例えば授業当時,実際に怪我をしていた児童は早めの避難を選択し、様子を見た上で避難を選択していた児童は暗くなる前の避難を選択するなど、各自が自身の考えに則した避難の選択を考えるようになった。本発表ではこれらの事例を示しつつ,この教材に残る課題も含めて考察を行う
大雨による災害は、地震による災害とは異なり、事前にある程度の予測が情報として提供される。事前に状況が予想できる状況は、一見対策が立てやすいようにも思われるものの、近年の大雨による災害は増加の一方である。大雨被害に対する防災,特に避難に関する意識変化や行動変容に関する研究は重要である。
本研究は、小学校及び中学校での総合的な学習の時間等の防災教育において、児童・生徒らが大雨の際に直面する避難のタイミングの難しさや避難時に発生するジレンマを体験し、水害時の避難の難しさを知ることで,それらへさらにどのように備えるかについて学ぶことのできる教材を開発・提案することを目的とする。
水害は地震災害とは異なり、気象予報などによって災害の規模が事前にある程度予測されている。その反面、情報を入手してから実際に水害に至るまでに時間がかかることで、避難行動を開始するタイミングが分かりにくいという問題がある。この教材は、こういった避難のタイミングの難しさや避難時に発生するジレンマを体験できる内容になっている。
作成した教材は紙芝居を用いたストーリー形式になっており、内容は対象の児童・生徒の年齢によって異なる。今回は小学校の高学年の児童を対象にしたものを紹介する。ストーリーは、主人公の児童(ケンくん)が祖母と二人きりで自宅にいる際に雨が降り始めるというところから始まる。この雨は、警戒レベル3相当の雨となり、その後警戒レベル4相当の雨へと変化していき、主人公を取り巻く状況も刻一刻と変化していく。この過程の様々なタイミングで、児童に「自分だったらこの時点で避難するのか」と逐次問いかけ、児童自身に考えてもらいながら進行していく。物語の中の主人公は、様々なジレンマによって最後まで避難しない.その物語の結末がどうなったのかは2パターン用意し、児童に提示する。1つ目は何事もなく翌朝を迎えるパターン、2つ目は2階まで浸水し、屋根の上で救助を待っているパターンである。この2パターンの結末を見せた後、時間を巻き戻してストーリーを最初から見せ,あらためて児童に避難するタイミングを考えてもらう。まとめとして、自分の置かれている状況を踏まえるということ、最悪の事態を想定するということ、1つの情報に縛られないということといった、避難を行動に移すにあたって重要なことをあげていく。上記の内容で小・中学校の授業1コマ(45分)分になっている。
中学生向けの教材では、発災場所が家族で訪れた川辺のキャンプ場となる。川の上流の状況を判断するなどの判断材料が増え、難易度が上がっている。
この教材は2021年度に入ってから3回、実際の小・中学校で使用している。1回目は7月19日の川越市立A中学校。2回目は11月1日に川越市立B小学校である。この時教材を使って授業をしたのはB小学校の教師である。そして3回目が11月8日に川越市立C小学校だ。今後についても教材の実施予定があり、新型コロナウイルスの影響で延期になってしまっているが、現時点では年度末に川越市立D小学校で実施する予定になっている。
紙芝居教材において、小学生を対象とした授業では45分間の授業で計5回、避難するか否かを問いかけた。避難する際には実際に問いかけるだけではなく、避難所と称した少し離れた場所に児童に移動をしてもらった。身体的な移動が伴うことで、実際の避難に思考を近付けるためである。集団で授業を受けているために、1人が立ち上がる(避難する)と、それにつられるようにして避難を選択する生徒も少なくなかった。しかし、それぞれの判断により、必ずしも避難することが正解になるわけではない。そのため、避難するか否かを児童に選択してもらった後には、何人かをランダムに指名し、理由を発言してもらった上で、敢えて全ての意見を肯定する。授業の最後にあらためて避難のタイミングを決めてもらう際には,避難のタイミングもその理由も変化している.例えば授業当時,実際に怪我をしていた児童は早めの避難を選択し、様子を見た上で避難を選択していた児童は暗くなる前の避難を選択するなど、各自が自身の考えに則した避難の選択を考えるようになった。本発表ではこれらの事例を示しつつ,この教材に残る課題も含めて考察を行う