日本地球惑星科学連合2022年大会

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[G-02] 地震火山地質こどもサマースクールのこれまでとこれから

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (23) (Ch.23)

コンビーナ:柴田 伊廣(文化庁文化財第二課天然記念物部門)、コンビーナ:松原 誠(防災科学技術研究所)、横山 光(北翔大学)、コンビーナ:松田 達生(株式会社 工学気象研究所)、座長:柴田 伊廣(文化庁文化財第二課天然記念物部門)、横山 光(北翔大学)

11:00 〜 13:00

[G02-P03] 地震火山地質こどもサマースクールでの地震波形紹介や観測点見学

*松原 誠1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:地震火山地質こどもサマースクール、地震観測点、地震波形

1. はじめに
 日本地震学会、日本火山学会、日本地質学会は、地元の団体と共同主催で地震火山地質こどもサマースクール(サマスク)を開催してきた。防災科学技術研究所(防災科研)は、この企画を2015年度から後援してきた。このような企画の中で、地元で観測された地震波形を紹介したり、地震観測点の見学をしたりすることは、地元の小中高生やその家族などが地学に関する知識を深め、また地震観測点の意義などについての理解を深めてもらう良い機会と考えている。
2. 地震波形の紹介
2015年長野県伊那市等での第16回サマスクでは、高感度地震観測網(Hi-net)長谷観測点において観測された2011年東北地方太平洋沖地震と2014年11月の長野県北部の地震の地震波形を時間・振幅スケールを合わせて紹介した。サマスクでは、子供たちに考えてもらうことを重要視しているので、紹介する際には時間や地震名などを伏せていつ、どこの地震かを連想してもらい、答えが出ない場合は順次時期などをヒントに提示し、子供たちに答えを導いてもらうようにした。現場では小さな揺れであった東北地方太平洋沖地震の波形が長く続いたのに対して、近くで起こり大きな揺れを感じた長野県北部の地震が短く終わっていることについて、子供たちからは驚きと疑問の声があった。2016年の和歌山県串本町等での第17回サマスクでは防災科研強振観測網(K-NET)串本観測点で観測された地震波形を見せながら、「おそらく皆が感じた揺れである」ことをヒントに、2016年4月1日の紀伊半島南東沖の地震へ導いた。2017年の熊本県益城町等での第18回サマスクの際は、観測点の見学がなかったので波形の紹介はなかったが、産業技術総合研究所が作成した熊本地震を特集したパネルや防災科研が阿蘇火山博物館での展示に作成したパネルを展示・提供した。2019年の京都府京丹後市等での第20回サマスクでは、Hi-net網野観測点において観測された2011年東北地方太平洋沖地震と2018年の大阪府北部の地震の観測波形を比較して説明した。

3. 地震観測点の見学
 地震波形の説明に加えて、2015, 2016年はそれぞれ長野県の防災科研Hi-net長谷観測点とK-NET串本観測点内部の見学も実施した。Hi-net観測点の地震計が地中にある理由を尋ねたり、Hi-netの観測井のうち一番深い埼玉県の岩槻観測点の深さが、ある山の高さと同程度であるということをヒントに、富士山の高さと同程度の深さの3500mの地下で観測していることなどを説明したりした。Hi-net観測点では地震計は地中のため見られないが、地震計の井戸の蓋や観測小屋内の収録機器なども説明した。これら2観測点は、公共施設に隣接した場所にあることから見学が可能であった。観測点自体が道路沿いや公園などに存在する場合は、外観を自由に見ることができる。しかし、内部の見学については、防災科研の職員の同伴が必要である。一方、一部の観測点は、学校や公共施設の敷地内に存在する。そのような場合は、敷地に入る了解を事前にとる必要が生じる。サマスクでは、基本的に終了後も外観を自由に見られる観測点を見学場所として選んでいる。なお、現在大多数のK-NET観測点は震度情報の発表地点となっているため、観測点内部の見学は困難となっている。

4. 展望
昨今は区画整理などにより、観測点の立ち退きを迫られる場合も少なくない。観測点は間隔が重要であるため、近くに観測点に適した場所の有無が重要となる。近傍の土地が確保できない場合は、観測点の空白域が生じてしまうことになる。また、研究によっては同じ場所で継続して観測したデータが必要となる場合もある。観測点を移設する場合は、観測性の掘削など多額の費用が必要となるため、地元の方々に対する観測点の存在意義を理解していただけるように努力する必要がある。サマスクでは、立ち入り制限のない場所にある観測点について可能な限り内部の見学や観測波形の紹介を通して、地震観測の大切さを子供たちに伝えていきたい。また、子供の学習を通して地震観測に対する理解が地域全体に深まっていくことも期待したい。