日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、コンビーナ:丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、座長:丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

14:15 〜 14:30

[G03-03] バーチャル巡検:360度画像を用いた地学教材のオンライン授業での実践

*佐藤 友彦1庄司 真史2、小林 佑介2河合 研志3 (1.東京工業大学理学院地球惑星科学系、2.株式会社ライブ・アース、3.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:地学教育、VR、巡検、360度画像、オンライン教育

地球科学とくに地質学の教育において, 学生が野外の露頭を現地で多角的に観察する機会として, 巡検が不可欠である. しかし, 人的資源や安全性などの理由により, 教育機関が巡検を実施するのは年々困難になっている. さらに, 近年のコロナ禍における行動制限により, 多くの巡検が中止・縮小されている. 我々は, 実際の巡検の学習を補うために, 没入感と歩き回れる体験に焦点を当て, 等間隔の360度画像を使用した地学初学者向けのバーチャル巡検教材を開発した (庄司ほか, 2022). 第一歩として, 三浦半島の城ヶ島を巡検地として選定した. BYOD (Bring Your Own Device; 個人所有のデバイスを持参する) 形式での使用を想定し, Webブラウザーを介して様々な情報端末からアクセスできるWebアプリケーションとして教材を実装した. 地球科学を専門としない大学3- 4年生を対象に, 対面授業 (2018-19年度; n=180) およびオンデマンド授業 (2020-21年度; n=273) の両方でバーチャル巡検を実践した. 授業後にアンケートを実施し, バーチャル巡検教材の有効性を評価した. その結果, 授業の評価, 教材の使用感, 地質構造の理解の助けになったか, 等, すべての項目について, 統計的有意に肯定的な評価を得た. これらの評価は, 学生の地学履修/巡検参加の経験の有無に依らなかった. また, オンデマンド授業に対する評価は, 対面授業と同等であった. 特に, 水平方向に移動可能であることについては, 観察点を各自で発見するのが楽しいと高く評価された. これらの成果を踏まえ, 今後, バーチャル巡検教材を改良し, 実際の巡検の予習/復習において活用・実践し, 露頭での限られた時間の教育効果を高めることを目指したい.

[参考文献]
庄司ほか (2022) 視点の水平移動可能なBYOD型地学VR巡検教材の開発. 地学教育, 74, 13-30.
https://doi.org/10.18904/chigakukyoiku.74.1_13