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[G03-P02] 3Dプリンタ印刷パーツで製作する学校教材用地震計
キーワード:地震計 教材 3Dプリンタ,Arduino
筆者は20年前から,学校で観測と教材の両方の目的で用いることのできる地震計の開発を続けてきた(端緒は岡本,1991).近年優れたマイクロコントローラArduinoと,超強力Neodym磁石のおかげで,比較的安価に,かつ十分に実用的な教材用地震計に改良した(Okamoto, 2015,2018).しかしこの地震計は筐体にアルミニウム材などを用いることから,製作には金属工作のスキルを必要とし,材料の入手もそれなりに苦労した.一方で,普及をはかるために学生生徒でも製作可能な,身近なパーツを用いた,振り子とセンサ製作の試みも公表した(岡本,2015,2016).ただこの振り子は構造上,安定性がいま一つで,教室デモ用としては最適でも,観測用としては心もとない.そこで近年性能向上が著しく,安価になってきた3Dプリンタによる印刷パーツで,従来の金属製の筐体や振り子を置き換え,開発工程を短縮,かつ安価に誰でも製作可能な方向に改良を続けている.なお製作のベースとした,従来機の振り子の形状は,上下動がKirnos型,水平動がSwing Gate(Paschwitz)型で,いずれも固有周期を5秒程度に設計している.これは古い気象庁59型地震計の仕様に拠った.ここで3Dプリンタパーツの使用のメリットは,1) 材料が安価であること.2) 設計図にあたるSTLファイルを公開すれば,誰でもそれを用いて同じ機能のパーツを製作しうる.3) 振り子の支点バネのかなり込み入った形状なども,3D印刷パーツでプラモデルを組み立てるように実用化できる.などである.さらに製作方針として,できるだけ特殊な作業を必要としない,既存品を流用して製作することにした.問題点としては,筐体と振り子に金属ではなくプラスティックを用いることの,機械的強度の問題や,経年変化などが残る.さらに,振り子の錘,コイル部の製作,さらに上下動振り子に用いるコイルバネなどは代替できず,製作上や入手の問題も残る.幸い親切なバネ製作業者の協力も得て,安価なピアノ線製ではあるものの,いわゆる「長さ0のバネ」の試作にも成功し,上下動振り子の固有周期の長周期化が実現できた.本論ではその現状を紹介し,問題点に対処するための今後の開発の展望について議論したい.