11:00 〜 13:00
[G05-P03] ガイドによるガイドマニュアル作成を通した地球科学的特徴への付加価値
キーワード:ジオパークガイド、地質多様性、アイヌ文化、アポイ岳高山植物群落
アポイ岳ジオパークは、北海道日高山脈南端に位置する様似町全域をエリアとするユネスコ世界ジオパークである。ジオパークの名前になっているアポイ岳は、町東部にそびえる標高810mの山で、山全体が本来は地表に露出しない岩石・上部マントル由来のかんらん岩でできている。始新世にユーラシアプレートと北米プレートが衝突(Kimura, 1996 ; Arita et al. 1993ほか)、前期中新世には太平洋プレートの斜め沈み込みにより北米プレート南縁の千島弧が西進し衝上し、日高山脈の形成が始まった。1,300万年前頃(宮坂ほか, 1986)には地下50-60kmの上部マントルに由来するアポイ岳も地表に露出したと言われている(新井田, 1999)。また、海岸の奇岩類は日本海拡大期(古堅ほか, 2010)にこれらの運動などに伴い形成され、数々の先住民族アイヌの口碑伝説(大野, 2016)が残されている。
アポイ岳ジオパークには全35か所のサイトがあるが、大半は約10年前に地質学者が中心となって設定したサイトであるため、住民になじみのないサイトや、価値がわかりづらいサイトがあることが問題であった(津曲, 2022)。このため様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会内の教育・普及部会にガイドマニュアル作成グループを新たに設定し、2022年度の冬期間にジオパークガイドマニュアル作成を行いながらサイト設定の見直しを行うことにした。ガイド、ガイド候補者と事務局が「サイトで何を語りたいのか」についてワークショップ形式で話し合いを行っている。雪が解けてからガイドが主体となる実践を野外で行い、学術顧問と共に確認を行いたいと考えている。これは今後の10年を見据えてもっと楽しくガイドしたいというガイドの思いからはじまった取り組みである(津曲, 2022)。
本発表ではこの取り組みを通した代表的なサイトの事例を紹介しながら、サイトの見せ方が整理される可能性、地球科学的特徴と自然・文化の相互作用について付加価値が生まれる可能性、ガイドが主体となってガイドマニュアル作成とガイド実践を行うことで人材育成につながる可能性、そして地域への広がりについて意見交換したい。
参考文献
Arita, K., Shingu, H., and Itaya, T.(1993)K-Ar geochronological constraints on tectonics and exhumation of the Hidaka metamorphic belt, Hokkaido, northern Japan. Jour. Mineral. Petrol. Econ. Geol. / Ganko, 88.3, 101-113.
古堅千絵・中川光弘・廣瀬亘・足立佳子(2010)前期~ 中期中新世の北海道中央部における火山岩の地球化学的特徴. 地質学雑誌, 116, 4, 199-218.
Kimura, G(1996)Collision orogeny at arc‐arc junctions in the Japanese Islands. Island arc, 262-275.
宮坂省吾・保柳康一・渡辺寧・松井愈(1986)礫岩組成から見た中央北海道の後期新生代山地形形成史, 地団研専報告, 31, 285-294.
新井田清信(1999)日高山脈:島弧深部でできた岩石, 北海道大学総合博物館学術資料展示解説書「北の大地が海洋と出会うところ-アイランド・アーク-」
津曲佐和(2022)ジオパークでの保全活動における専門家と地域住民の協働のあり方. 令和3年度北海道大学卒業論文.
大野徹人(2016)アポイのふもとから.
アポイ岳ジオパークには全35か所のサイトがあるが、大半は約10年前に地質学者が中心となって設定したサイトであるため、住民になじみのないサイトや、価値がわかりづらいサイトがあることが問題であった(津曲, 2022)。このため様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会内の教育・普及部会にガイドマニュアル作成グループを新たに設定し、2022年度の冬期間にジオパークガイドマニュアル作成を行いながらサイト設定の見直しを行うことにした。ガイド、ガイド候補者と事務局が「サイトで何を語りたいのか」についてワークショップ形式で話し合いを行っている。雪が解けてからガイドが主体となる実践を野外で行い、学術顧問と共に確認を行いたいと考えている。これは今後の10年を見据えてもっと楽しくガイドしたいというガイドの思いからはじまった取り組みである(津曲, 2022)。
本発表ではこの取り組みを通した代表的なサイトの事例を紹介しながら、サイトの見せ方が整理される可能性、地球科学的特徴と自然・文化の相互作用について付加価値が生まれる可能性、ガイドが主体となってガイドマニュアル作成とガイド実践を行うことで人材育成につながる可能性、そして地域への広がりについて意見交換したい。
参考文献
Arita, K., Shingu, H., and Itaya, T.(1993)K-Ar geochronological constraints on tectonics and exhumation of the Hidaka metamorphic belt, Hokkaido, northern Japan. Jour. Mineral. Petrol. Econ. Geol. / Ganko, 88.3, 101-113.
古堅千絵・中川光弘・廣瀬亘・足立佳子(2010)前期~ 中期中新世の北海道中央部における火山岩の地球化学的特徴. 地質学雑誌, 116, 4, 199-218.
Kimura, G(1996)Collision orogeny at arc‐arc junctions in the Japanese Islands. Island arc, 262-275.
宮坂省吾・保柳康一・渡辺寧・松井愈(1986)礫岩組成から見た中央北海道の後期新生代山地形形成史, 地団研専報告, 31, 285-294.
新井田清信(1999)日高山脈:島弧深部でできた岩石, 北海道大学総合博物館学術資料展示解説書「北の大地が海洋と出会うところ-アイランド・アーク-」
津曲佐和(2022)ジオパークでの保全活動における専門家と地域住民の協働のあり方. 令和3年度北海道大学卒業論文.
大野徹人(2016)アポイのふもとから.