11:00 〜 13:00
[HCG22-P02] ミュンヘン住宅地の景観評価
キーワード:景観評価、ミュンヘン住宅地、緑と雪、冬ざれ
研究の方法
前研究に従い、住宅地の写真画像を用意した。
この画像を知人にメールで送り、それぞれの好みから1-5点で評価を得た。
一方、画像と現地の調査から景観評価に寄与する物理的諸量を計測した。
各々の評価と物理的諸量の関係を重回帰分析で求めた。
その結果の回帰係数t値まとめ、夫々の回答者の傾向を探った。
そして、回答者の多様な判断の差を考察した。
評価画像の準備
ミュンヘンの住宅地は青木(1993)がミュンヘン滞在時にミュンヘン技術大学のバレンチン教授の研究室により、提示されたものとラッツ教授の研究室のメンバーに助言を得たものである。早春と晩夏の写真は青木が撮影し、冬の写真はクロイツが撮影したものである。
30の住宅地の3つの季節の、同じ地点の写真を用意した。
画像に対する評価調査の実施
この90枚の画像をメールで、世界中の知人に送付し、18名の知人から、各自の好ましさの評価を1-5で得た。回答者は景観評価に関心のある人々で、日本人9人、欧州人6人、アジア人3人であった。
画像の物理的諸量の計測
景観に関する物理的諸量を青木(1993)に従い計測した。測定項目と測定方法は表1の通りである。今回は雪景色が増えているので、雪の被率も測定した。分析中にdata17の回答から、新しい変数が見つかった。俳句の季語である「冬ざれた景色」という感じが影響して居た。しかしこれは物理的変数に計測出来ないので、冬ざれた画像に1,そうでない画像に0を与え、ダミー変数とした。
好みの評価と物理的諸量の関係
これらの物理的条件を示す、画像情報を用い、回答者の好みを分析した。その結果表2のように、回答者により、諸量の影響が異なることが分かった。冬ざれが一番多くの人に統計的に有意な影響を示した。同程度に緑視率が寄与し、雪がそれに続いた。他の変数は人それぞれで、影響が大きく異なり、半数以上人に有効となる変数は無かった。人口密度に反応した人、階高に反応した人、針葉樹に反応した人、目立つ壁面に反応した人、道路までの広さに反応した人、灌木の植栽に反応した人、車の台数に反応した人、屋根の面積に反応した人、草地に反応した人などがいた。道路の広さとガラス壁面、屋根の高さに反応した人は居なかった。
このように回答者の反応は多様で、景観評価の反応が人それぞれであることが分かった。各回答者の評価に対する重相関係数は平均で0.675、最低0.499から最高0.802まで得られた。重相関係数の値から判断すると、まだ重要な物理的変量が存在することを示し、今後の研究が待たれる。
好みのグループ
重回帰分析で得られた、偏回帰係数のt値(重要度)をクラスタ分析でグルーピングすると、3つのグループに分かれた。
第一のグループは欧州の人を多く含むグループで、第二のグループはdata4とdata15のグループ、第三のグループは日本人を多く含むグループであった。
この結果より日本人的な景観評価と欧州的な景観評価が存在し、別に人的要素を中心に評価したグループがあることが分かる。
このような人の集団による評価の違いの研究はZebe(1973)に始まる。Aoki(1983)が示すように同じつくば市に住んでいる人々でもその居住体験により、景観の把握が異なる事が分かっている。
そこで、どのような変数がこれらのグループを分けているのか調べた。各グループの偏回帰係数の平均値を計算し、お互いを比べると、図2、3、4のようになる。1グループと2グループは定数項と緑に対する評価に違いが見られる。2グループと3グループには冬ざれの項目が異なることが分かる。1グループと2グループでは緑と自動車に対する評価に違いが見られる。
全体的な景観の好み
回答者の好みの平均を用いて、重回帰分析を行うと、雪、緑、屋根、冬ざれの4変数が有効であった。前の結果(青木1993)と比べると、有効な変数が少なくなったが、多様な回答者の意見をまとめた結果であると考えると、妥当な結果である。特に、雪、緑、冬ざれは半数以上の人に認められた変数である。一番影響の大きい「冬ざれ」はまだ物理的計測が出来ないものなので、今後の画像研究者の協力が必要である。
前研究に従い、住宅地の写真画像を用意した。
この画像を知人にメールで送り、それぞれの好みから1-5点で評価を得た。
一方、画像と現地の調査から景観評価に寄与する物理的諸量を計測した。
各々の評価と物理的諸量の関係を重回帰分析で求めた。
その結果の回帰係数t値まとめ、夫々の回答者の傾向を探った。
そして、回答者の多様な判断の差を考察した。
評価画像の準備
ミュンヘンの住宅地は青木(1993)がミュンヘン滞在時にミュンヘン技術大学のバレンチン教授の研究室により、提示されたものとラッツ教授の研究室のメンバーに助言を得たものである。早春と晩夏の写真は青木が撮影し、冬の写真はクロイツが撮影したものである。
30の住宅地の3つの季節の、同じ地点の写真を用意した。
画像に対する評価調査の実施
この90枚の画像をメールで、世界中の知人に送付し、18名の知人から、各自の好ましさの評価を1-5で得た。回答者は景観評価に関心のある人々で、日本人9人、欧州人6人、アジア人3人であった。
画像の物理的諸量の計測
景観に関する物理的諸量を青木(1993)に従い計測した。測定項目と測定方法は表1の通りである。今回は雪景色が増えているので、雪の被率も測定した。分析中にdata17の回答から、新しい変数が見つかった。俳句の季語である「冬ざれた景色」という感じが影響して居た。しかしこれは物理的変数に計測出来ないので、冬ざれた画像に1,そうでない画像に0を与え、ダミー変数とした。
好みの評価と物理的諸量の関係
これらの物理的条件を示す、画像情報を用い、回答者の好みを分析した。その結果表2のように、回答者により、諸量の影響が異なることが分かった。冬ざれが一番多くの人に統計的に有意な影響を示した。同程度に緑視率が寄与し、雪がそれに続いた。他の変数は人それぞれで、影響が大きく異なり、半数以上人に有効となる変数は無かった。人口密度に反応した人、階高に反応した人、針葉樹に反応した人、目立つ壁面に反応した人、道路までの広さに反応した人、灌木の植栽に反応した人、車の台数に反応した人、屋根の面積に反応した人、草地に反応した人などがいた。道路の広さとガラス壁面、屋根の高さに反応した人は居なかった。
このように回答者の反応は多様で、景観評価の反応が人それぞれであることが分かった。各回答者の評価に対する重相関係数は平均で0.675、最低0.499から最高0.802まで得られた。重相関係数の値から判断すると、まだ重要な物理的変量が存在することを示し、今後の研究が待たれる。
好みのグループ
重回帰分析で得られた、偏回帰係数のt値(重要度)をクラスタ分析でグルーピングすると、3つのグループに分かれた。
第一のグループは欧州の人を多く含むグループで、第二のグループはdata4とdata15のグループ、第三のグループは日本人を多く含むグループであった。
この結果より日本人的な景観評価と欧州的な景観評価が存在し、別に人的要素を中心に評価したグループがあることが分かる。
このような人の集団による評価の違いの研究はZebe(1973)に始まる。Aoki(1983)が示すように同じつくば市に住んでいる人々でもその居住体験により、景観の把握が異なる事が分かっている。
そこで、どのような変数がこれらのグループを分けているのか調べた。各グループの偏回帰係数の平均値を計算し、お互いを比べると、図2、3、4のようになる。1グループと2グループは定数項と緑に対する評価に違いが見られる。2グループと3グループには冬ざれの項目が異なることが分かる。1グループと2グループでは緑と自動車に対する評価に違いが見られる。
全体的な景観の好み
回答者の好みの平均を用いて、重回帰分析を行うと、雪、緑、屋根、冬ざれの4変数が有効であった。前の結果(青木1993)と比べると、有効な変数が少なくなったが、多様な回答者の意見をまとめた結果であると考えると、妥当な結果である。特に、雪、緑、冬ざれは半数以上の人に認められた変数である。一番影響の大きい「冬ざれ」はまだ物理的計測が出来ないものなので、今後の画像研究者の協力が必要である。