日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 原子力と地球惑星科学

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、コンビーナ:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所 )、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、座長:新里 忠史(日本原子力研究開発機構)、長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)

09:00 〜 09:15

[HCG24-01] 等高線の形状解析による第四紀火山の岩脈分布のモデル化および火道安定性評価の検討

*西山 成哲1川村 淳2梅田 浩司3後藤 翠2丹羽 正和2 (1.株式会社オズペック、2.国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構、3.弘前大学大学院理工学研究科)

キーワード:第四紀火山、火道、岩脈、GIS:地理情報システム、等高線ポリゴン

火山・火成活動や地震活動・断層運動といった自然現象の影響を適切に把握することは,高レベル放射性廃棄物の地層処分の技術的信頼性を高めていく上で非常に重要である.このうち,火山・火成活動に関しては,マグマの影響範囲をモデル化して提示することが技術的課題の一つとして挙げられる.この課題に対しては,特に岩脈の発達に関する調査事例を蓄積していくことが重要であるが,現存の火山体下に伏在している火道および岩脈の分布を把握することは現実的に困難である.
一方で,火山の山体の裾野の広がりは,実際の岩脈の分布範囲を反映していると考えられている[1].この考え方を援用し,向山ほか(1996)[2]では数値標高モデルを用いて火山体の標高ごとの形状,面積,重心などの地形パラメータを計測することにより,いくつかの火山を対象に放射状岩脈の三次元的な分布範囲のモデル化を試みている.最近ではデータ処理能力の向上により,GISソフトウェアを用いた火山体の地形解析が,火山体下の岩脈の分布範囲を推定するのに有効であることが示されつつある[3] [4].日浦ほか(2021)[3]では,10 m DEMを用い,山体の等高線の重心を求めることで,その火山の活動履歴を追える可能性を見出した.西山ほか(2021)[4]では,日浦ほか(2021)[3]の手法からエキスパートジャッジとなる要素をなくした重心の算出手法を提案し,火山の放射状岩脈のモデル化を図った.しかし,得られた重心分布が火道と放射状岩脈のどちらの影響によるものかが区別できておらず,火道の安定性を評価できない状態である.本研究では,等高線の形状に注目し,岩脈分布のモデル化および火道の安定性評価に向けた検討を行った.本発表では,以上の検討結果について報告する.
本研究では,西山ほか(2021)[4]の解析により得られるデータに加え,各標高の等高線分布のうち最大距離となる線(以下,長軸)を引き,その方位データを集計した.また,等高線で囲われた領域(以下,等高線ポリゴン)の面積データを用いた計算を実施し,各火山の地形パラメータとして算出した.具体的には,各標高の最大面積の等高線ポリゴンに対するその他の等高線ポリゴンの面積の比,およびその等高線ポリゴンの面積の値をそれぞれ平均したものを各火山で算出し,その算出結果による火山のグループ分けを試みた.
解析の結果,火山体の等高線の長軸方位は,各火山で方位がある程度集中する結果が得られた.重心同士を結んだ線の方位と整合的な火山も多く見られ,それらは火山周辺のσ1の方向とおおよそ合致する結果となった.岩脈は一般に最大圧縮軸の方向に進展する特徴があるとされていることから[5],地形解析結果はこれと整合的であると言える.一方で,整合的でない火山もある.この要因については現在検討中であるが,噴出率が比較的低い火山であることが多い.等高線ポリゴンの面積を用いた各火山の地形パラメータは,高橋(1994)[6]で分類されている火道安定型と火道不安定型の火山とに区別可能なことを示唆する結果となった.このことは活動履歴が詳らかになっていない火山においても,地形解析により火道の安定性を評価が可能となることが期待されるものである.
今後,これらの地形的特徴をもとに評価手法を作り上げ,地形解析による火道の安定性評価,および岩脈分布のモデル化手法の確立を目指す.
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和2~3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である.

References: [1] Nakamura (1977). Journal of Volcanology and Geothermal Research, 2, 1-16. [2] 向山ほか (1996). PNC TJ7362 96-001. [3] 日浦ほか (2021). 日本地球惑星科学連合2021年大会講演要旨, HCG23-P01. [4] 西山ほか (2021). 日本応用地質学会講演論文集, 88, 169-170. [5] 中村 (1969). 火山, 14, 8-20. [6] 高橋 (1994). 火山, 39, 191-206.