日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 原子力と地球惑星科学

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、コンビーナ:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所 )、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、座長:新里 忠史(日本原子力研究開発機構)、長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)

09:45 〜 10:00

[HCG24-04] 海水準変動にともなう地下水流動場と滞留時間の変遷に関する解析的検討

*岡本 駿一1、長谷川 琢磨1、森 康二2、中田 弘太郎1 (1.一般財団法人 電力中央研究所、2.株式会社ブルーアースセキュリティ)

キーワード:海水準変動、塩淡境界、滞留時間、化石海水、地下水流動解析、地層処分

【背景と目的】
高レベル放射性廃棄物の地層処分において、処分の候補地は輸送の観点から、沿岸域が好ましいと考えられている。沿岸海底下の海水域では動水勾配が小さく、地下水流動が非常に緩慢であると推測されている。ただし、長期的な評価では、海水準変動による地下水流況の変化を検討する必要がある。そこで、沿岸域における長期的な地下水流動を評価するために、海水準変動を考慮した地下水流動解析を実施した。さらに、海水を起源とした間隙水における塩分濃度の変化だけでなく、地下水の滞留性を評価するため、滞留時間も解析した。ここでは、海水準変動にともなう沿岸域地下水の塩分濃度や滞留時間の変遷から、化石海水のような易動性が極めて低い地下水が残存するための透水係数を考察した。

【解析方法】
地形勾配が一定で均質媒体を仮定した2次元モデルを用いて、海水密度を考慮した地下水流動と滞留時間の非定常解析を行った。滞留時間の解析は、一定速度で物質を発生させる方法で実施した。地下水流動・物質移行解析にはFEFLOWを使用した。海水準変動は、最大海進時+5m、最大海退時-120mで、海退10万年、海進2万年の12万年周期で発生すると想定し、3周期分を解析した。海水準変動のモデル化は、時間とともに変遷する海水準を地表面の境界条件の変化として設定した。

【結果と考察】
透水係数が1.0×10-6 m/sのとき、塩淡境界は海水準変動に追従して移動した。さらに、海水準変動によって、淡水域と海水域とが入れ替わるため、地下水の滞留時間は淡水域と海水域でほとんど変わらなかった。透水係数が1.0×10-9 m/sのとき、海水準変動の影響は小さく、海水準変動に伴って地下水の浅部のみが淡水化し、間隙に残留した海水の滞留時間は長くなった。これらは、透水係数によって、海水準変動が地下水に与える影響は異なることを意味している。また、海水準変動の影響を受けても、透水係数が小さい場合はその影響は地下深部に及ばないと考えられた。これは、透水係数が小さい地層では、地下深部に化石海水が残留していることと関係していると考えられた。

本研究は、経済産業省からの受託研究「令和3年度 高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(沿岸部処分システム評価確証技術開発)」の成果の一部である。ここに記して謝意を表します。