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[HCG24-05] 日本の沿岸部における深層地下水の理解に向けた取り組み
キーワード:地層処分、沿岸域、地下水、塩淡境界、海底湧出地下水
沿岸部は地下水の流れが極めて小さく、流動性が長期間にわたって低い場所を見いだせる可能性があり、かつ隆起速度が小さい地域が比較的多いという特徴から地層処分の候補地の一つとされている。一方で、沿岸海底下を含む沿岸部深部における水文地質学的なデータや知見はこれまで十分に得られておらず、調査方法についても確立されていないものもある。産業技術総合研究所は電力中央研究所と共に、これまでの研究プロジェクトにおいて、北海道幌延町沿岸部と静岡県の駿河湾沿岸部において、沿岸部の深部地下水の滞留時間を含む流動系や調査手法の開発を行ってきた。本発表では、これらの取り組み及び成果について紹介する。
北海道幌延町では2000年から日本原子力研究開発機構による地上調査が開始された。産総研は2007年から沿岸部における地下水調査を開始し、2013年までの6年間で、最大で深度1200mの井戸を含む合計3本の観測井の掘削と、陸域と海域における各種物理探査を実施した。さらに2017年に深度350mの観測井を設置した。ここから得られた地質データや地下水データを組み合わせることにより、海底下に最終氷期の降水によって涵養された淡水性地下水が海岸線から沖合5km以上にわたり、連続的に存在することを国内で初めて明らかにし、またそれまで水理的基盤として考えられていなかった第四紀層の中に、現降水から化石海水までを起源にもつ複数の地下水が存在していることを明らかにした。海底下における淡水性地下水の存在については、過去の油・ガス田開発や炭田開発、海底トンネル掘削等により断片的に報告されていたが、本事業の成果により初めて海底下の淡水の可視化と涵養プロセスが明らかとなった。
静岡県駿河湾では、2013年から陸域と海域の両方を含む大規模な広域地下水調査とボーリング掘削や海底湧水調査により、涵養域から流出域に至る流域全体の地下水流動プロセスの解明を実施してきた。2014年から2015年にかけて海岸に深度350mの調査孔を掘削し、深度150m付近の塩淡境界より下部では地下水の年代が深度方向に伴い、新しくなることを明らかにした。これは塩淡境界より下部の塩水の動きを間接的に明らかにした国内初の事例である。2020年からは、より深部の塩水挙動や第三紀堆積岩中の地下水の賦存状態を把握するため深度800mを想定したボーリング掘削を進めており、またこれまで点の情報として捉えられることが多かった海底湧出地下水について、湾全体での面的評価を可能とするような技術の開発を進めている。最終的に、これら沿岸部地下水に関する知見や評価技術を体系化することで、より安全な地層処分事業の実施にむけて貢献していきたいと考えている。
謝辞 本研究は,経済産業省資源エネルギー庁委託事業(「高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)」等)の一部です。ここに記して謝意を示します。
北海道幌延町では2000年から日本原子力研究開発機構による地上調査が開始された。産総研は2007年から沿岸部における地下水調査を開始し、2013年までの6年間で、最大で深度1200mの井戸を含む合計3本の観測井の掘削と、陸域と海域における各種物理探査を実施した。さらに2017年に深度350mの観測井を設置した。ここから得られた地質データや地下水データを組み合わせることにより、海底下に最終氷期の降水によって涵養された淡水性地下水が海岸線から沖合5km以上にわたり、連続的に存在することを国内で初めて明らかにし、またそれまで水理的基盤として考えられていなかった第四紀層の中に、現降水から化石海水までを起源にもつ複数の地下水が存在していることを明らかにした。海底下における淡水性地下水の存在については、過去の油・ガス田開発や炭田開発、海底トンネル掘削等により断片的に報告されていたが、本事業の成果により初めて海底下の淡水の可視化と涵養プロセスが明らかとなった。
静岡県駿河湾では、2013年から陸域と海域の両方を含む大規模な広域地下水調査とボーリング掘削や海底湧水調査により、涵養域から流出域に至る流域全体の地下水流動プロセスの解明を実施してきた。2014年から2015年にかけて海岸に深度350mの調査孔を掘削し、深度150m付近の塩淡境界より下部では地下水の年代が深度方向に伴い、新しくなることを明らかにした。これは塩淡境界より下部の塩水の動きを間接的に明らかにした国内初の事例である。2020年からは、より深部の塩水挙動や第三紀堆積岩中の地下水の賦存状態を把握するため深度800mを想定したボーリング掘削を進めており、またこれまで点の情報として捉えられることが多かった海底湧出地下水について、湾全体での面的評価を可能とするような技術の開発を進めている。最終的に、これら沿岸部地下水に関する知見や評価技術を体系化することで、より安全な地層処分事業の実施にむけて貢献していきたいと考えている。
謝辞 本研究は,経済産業省資源エネルギー庁委託事業(「高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)」等)の一部です。ここに記して謝意を示します。