日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 原子力と地球惑星科学

2022年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、コンビーナ:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所 )、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、座長:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、久保 大樹(京都大学大学院工学研究科)

10:45 〜 11:00

[HCG24-07] 瑞浪層群中の球状コンクリーションの産状と工学的特性

*中村 祥子1、吉田 英一1後藤 慧2竹内 真司2隈 隆成1 (1.名古屋大学、2.日本大学)

キーワード:コンクリーション、シーリング

コンクリーションとは堆積岩中に存在する岩塊で、堆積物の粒子間隙に鉱物が析出・充填することによって硬く凝結した岩塊のことを指す。このようなコンクリーションの中でも炭酸カルシウムを主成分とするコンクリーションは死滅した生物遺骸を核として持つことがある。炭酸塩コンクリーションはその核となった生物遺骸から拡散した有機酸と空隙水中のカルシウムイオンの間で過飽和・沈殿反応で急速に凝結することが知られている。この急速な沈殿反応と堆積物の隙間をシーリングするメカニズムは地下空洞やトンネルなどの建造物における岩盤地下水亀裂のシーリング技術に応用することなどが期待されている。これまでの研究から、コンクリーションの内部におけるカルシウムの濃度が概ね一定であることが判明しているが、炭酸カルシウムのシーリングに伴う透水特性や硬度特性などの水理・力学特性については定量的に検討された例は未だにない。
 本研究では材料学的評価のために岐阜県の新第三紀瑞浪層群中に産出するコンクリーションを対象とした。瑞浪市を流れる土岐川の河床からは球状や楕円体のコンクリーションが多数観察できる。材料学的評価のためにコンクリーションの内部と周辺母岩を対象に組織の観察のほか、空隙率測定、硬度試験、透水試験を実施した。
 コンクリーション約100試料に対して、それぞれ長径・短径・高さを測定した。同時に地層の層理面との関係を確認するためにコンクリーションの長軸の走向傾斜を計測した。コンクリーション内部の構造や組成の観察を目的として、電子走査顕微鏡(SEM)での観察や薄片の作成・観察を行った。透水特性の検討のために乾燥重量と湿潤重量を計測し空隙率を算出した。加えてコンクリーション内部と母岩部から直径5cm、厚さ約3㎝の試料をコアリングし変水位透水試験及びフローポンプ法により透水係数を測定した。硬度試験はエコーチップ(超鋼製のボールチップを岩石表面に打撃し、その落下速度と跳ね返り速度から硬度を算出する測定装置)を用い、切断研磨した岩石表面で測定を行った。
瑞浪で観察された炭酸塩コンクリーションはいずれも球形・楕円体をしていて、比較的大きなものほど楕円体をしている傾向があった。また観察された楕円体のコンクリーションは地層面に対して水平方向に長軸があり、短軸は垂直方向にあった。薄片観察及び電子顕微鏡による岩石内部の空隙状態の観察の結果、コンクリーション内部は、微細な空隙までが炭酸カルシウム(カルサイト)によって充填・シーリングされていることが確認された。この炭酸カルシウムの充填によって、空隙率は低下し、低いものでは5%以下にまで低下する。エコーチップでの硬度を測定した結果、コンクリーションは、周辺母岩よりも硬度が高く、炭酸カルシウムのシーリングによって緻密さが増していることが示された。さらに透水試験の結果、透水係数は10-12(m/s)オーダーであり、砕屑岩にも関わらず花崗岩に匹敵する値を示した。これらの結果から、コンクリーションは堆積後の早い段階に炭酸カルシウムによるシーリングが進行し、透水性が低下することによって、地表面に露出した後も物理的及び化学的風化に対して高い耐久性を有することが示唆された。