日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 原子力と地球惑星科学

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、コンビーナ:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所 )、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、座長:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

11:00 〜 13:00

[HCG24-P02] 花崗岩中の割れ目形成の地質学的検討-中部日本、土岐花崗岩の事例-

*笹尾 英嗣1湯口 貴史2 (1.国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター、2.山形大学理学部)

キーワード:高レベル放射性廃棄物地層処分、熱水変質、冷却過程、微小空隙

花崗岩などの結晶質岩中の割れ目は地下水や物質の移行経路として機能するため,高レベル放射性廃棄物の地層処分においては,割れ目密度や走向傾斜,充填鉱物などの特徴を理解することが重要である。花崗岩中の割れ目は,花崗岩質マグマの定置から固化を経て現在に至る冷却過程において形成されたものであり,地質学的なイベントやプロセスや割れ目形成に影響した可能性を示唆する。
土岐花崗岩は白亜紀後期に形成された岩体で,14km×12kmのほぼ円形の分布を示す。本花崗岩は,岩体縁辺部から中央部に向かって白雲母-黒雲母花崗岩,角閃石-黒雲母花崗岩,黒雲母花崗岩の3つの岩相に区分されている。本花崗岩分布域では掘削長500~1300mの19本の深層ボーリングが掘削されており,割れ目に関するデータが取得されている。本発表では,割れ目データと地質学的、地球年代学的、記載岩石学的データとを比較し、割れ目形成に重要な地質事象の抽出を試みた。
土岐花崗岩では,割れ目密度は岩体中央部で高く,西部と北東部で低く,西部を覗いて深部で減少する(Yuguchi et al., 2012)。割れ目密度は800℃から300℃の間の冷却速度と相関し,冷却速度の遅い領域で割れ目密度が高く,速い領域で低い(Yuguchi et al., 2019)。割れ目密度は花崗岩の岩相境界で急激にあるいは徐々に変化することも明らかになっている(Yuguchi et al., 2019)。
最近,発表者らは割れ目密度が黒雲母の緑泥石化の強度や黒雲母中の微小空隙の大きさに関連することを見出した(Yuguchi et al., 2021)。黒雲母の緑泥石化は花崗岩体冷却時に形成された熱水に伴うものである(Yuguchi et al., 2015)。
これらの結果は,花崗岩中の割れ目が花崗岩マグマの特徴,マグマ冷却過程関連して形成されたことを示す。こうしたアイディアを検証するため,発表者は現在,土岐花崗岩以外の岩体において,同様のデータ取得を進めている。
本研究はJSPS科研費 20K05410の助成を受けたものです。

参考文献
Yuguchi et al. (2012) Eng. Geol., 149-150, 35–46.
Yuguchi et al. (2015) American Mineralogist, 100, 1134–1152.
Yuguchi et al. (2019) Jour. Asian Earth Sci., 169, 47–66.
Yuguchi et al. (2021) PLoS ONE, 16, e0251198