日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG26] 気候変動への適応とその社会実装

2022年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山野 博哉(国立環境研究所)、コンビーナ:石川 洋一(海洋研究開発機構)、大楽 浩司(筑波大学)、コンビーナ:田村 誠(茨城大学地球・地域環境共創機構)、座長:山野 博哉(国立環境研究所)、石川 洋一(海洋研究開発機構)、大楽 浩司(筑波大学)、田村 誠(茨城大学地球・地域環境共創機構)

13:45 〜 14:00

[HCG26-01] 世界はなぜ脱炭素に向けて舵を切ったのか?気候変動対策ツールの充実と気候変動問題認識の変化

*山崎 大1北 祐樹4,1木野 佳音1,2、坂内 匠1、野村 周平1、神戸 育人1庄司 悟1,3金子 凌1芳村 圭1,2,3 (1.東京大学生産技術研究所、2.東京大学大気海洋研究所、3.東京大学新領域創生科学研究科、4.株式会社Gaia Vision)

キーワード:脱炭素、気候変動対策、TCFD、気候変動問題の認識

国際社会はパリ協定で気温上昇を産業革命前比2℃未満に抑えると合意し,近年は脱炭素をキーワードとした目標が次々発表されている.脱炭素の実現は京都議定書に基づいたこれまでの気候変動対策に比べ遥かに野心的で社会構造の大転換が求められるが,企業が組織する経済団体からも反発ではなく脱炭素に協働するという発表が相次いでいる.本研究は,気候科学の知見・各国の経済政策・企業と投資家の取り組み・NGO等の活動に着目してこれまでの動向を調査し,どうして世界は脱炭素に向けて動き始めたのか?という背景を俯瞰的視点から明らかにする.文献調査の結果,気候科学の発展が国際合意に影響をしたことに加えて,企業に気候リスク情報の開示を求めるTCFDといった新たな気候変動対策ツールの整備が脱炭素の動きを後押していることが確認できた.また,民間企業でも気候リスク低減と経済的利益がTCFD等を通して結びつき,「気候変動対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という当事者意識のパラダイムシフトが起きていることが示唆された.これらの気候変動対策をサポートする社会情勢の変化を背景として,世界は脱炭素に向けて舵を切ったと考えられる.